第50話 再会
突然起きた爆発は、辺り一面を焼け野原にするには十分すぎる威力だった。
そして俺の周りを包囲していたディスペルタルは、跡形もなく消え去っていた。
だが俺の足元の地形は全く変わっておらず、俺も無傷のままだ。
そして面倒なことに、勇者達も無傷で俺の後ろから変な声を上げている。
一体誰がこんなことをしたのかは、考えるまでもない。
俺がディスペルタルに包囲された時、かなりの速度で近づいてきた存在が、2つあった。
「助かったよ。ありがとう……ルーチェに静香」
「いぇ、ご主人様なら助けなど必要なかったと思います。ですがいち早く私の成長を見ていただきたかったので、つい出しゃばってしまいました。申し訳ございません」
「私も、耀君なら大丈夫だと思ったんだけど、一応対応できるようについてきました」
そう言って2人は、俺の前でかしこまる。
「それにしても凄い魔法だったな。赤い玉の威力は中々だった、どんな感じの魔法なんだ?」
「はい、まず[火魔法]のファイヤーボールと[土魔法]のストーンボールを複合します。これだけでは爆発はしないのですが、複合して少し大きくなった時に、[水魔法]のウォータボールを同じ場所に発動すると、一瞬で先ほどのように爆発いたします」
ルーチェは得意げにそう言った。
なるほど。
[火魔法]と[土魔法]の複合でマグマを作り、マグマの中に水を入れる。
マグマにかけるのではなく、入れることによって、水蒸気の逃げ場を無くし強力な水蒸気爆発を起こしたのか。
参考にして、俺も面白い魔法を作ってみるか。
「ルーチェがあの赤い玉を作ったってことは、俺を守ってくれた魔法は静香の魔法か?」
「やっぱり気づきましたか?」
「いくらなんでも気づくだろ、同じような魔法を3重ぐらいにしてたな? それに貫通した個所は勝手に元に戻ってたし、かなり特殊な魔法なんじゃないのか?」
俺の言葉に静香は、う~んと首をひねる。
「どうなんでしょう? 一応[回復魔法]と[結界魔法]の複合魔法なんですけど、他にも使える人が何人かいるらしいですし……」
「また厄介そうな魔法を思いついたんだな。しかも既に何人か使えるやつがいるのかよ」
それにしても魔法に対して[回復魔法]か。
これも面白い魔法が作れそうだな。
俺がそんなことを考えていると、セバスと、ホワイトの上に乗ったマリーが現れた。
「お久しぶりです、我が主」
「ガウ」
マリーはなにも言わず、ホワイトから降りて深く頭を下げた。
「ホント久しぶり。積もる話もあるだろうから、ゆっくりと話せるように場所を変えよう」
「かしこまりました」
セバスはそう言って頭を下げた。
「待ってくれ、朝野」
そして場所を変えようと歩き出した瞬間、ある程度予想はできていたが、勇者から声をかけられた。
俺は何も言わず、ただ振り返る。
「……」
「頼みがあるんだが、聞いてくれないだろうか?」
「……聞くだけ聞いてやる」
「ありがとう。朝野が城を離れてからいろいろあってね。既にわかっているだろうけど、俺達はトゥーエル王国に追われている」
「前置きはいい、さっさと本題を話せ」
「すまない、それじゃぁ本題を。俺達の頼みは、あの忍者みたいな奴らから守ってもらいたいんだ」
俺はその言葉を聞いた瞬間、無言で歩き出した。
「待ってくれ頼む! しっかりと礼はさせてもらうから!」
「ほぉ」
俺は無視して先を進もうと思っていたのだが、今の一言で気が変わった。
俺は意味ありげな笑みを浮かべならそう答えた。
「礼とは何をしてくれるんだ? 内容によっては考えてやってもいいぞ?」
「本当か! ありがとう。内容はまだ決めてないんだが、決める前に一つ確認させてほしいことがある。大丈夫だろうか?」
「いいぞ、なんだ?」
「朝野は……元の世界に戻りたいか?」
俺はそんなことが聞かれるとは思っておらず、少し驚いた。
「なるほど。やはり担任とは違って、少しは話ができるみたいだな」
「話ができるかはわからないけど、あの人と同じにされなかったことはかなりうれしいな」
「教師が反面教師になるなんて、皮肉なもんだ」
「確かに。それで朝野はどっちなんだい?」
「決まってる。もちろんこの世界で生きていく。リア充だったわけじゃないからな。それに元の世界に戻ったところで、何か秀でた才能があったわけでもないし」
「わかった。ならお礼はこの世界で役に立つもののほうがいいってことだね」
「あぁ。だが、お前達に俺が満足できるようなものが用意できるのか?」
「何としてでも用意してみせるさ。10回やれば1回ぐらいいいのがあるだろう?」
俺が満足できるまで何回もチャレンジしてくるってことか。
面白い。
「いいだろう。それで、いつまで俺はお前達を守ればいい?」
「贅沢は言わないよ。一時的にでも忍者みたいな奴らを気にせずに、レベルを上げられる場所までで大丈夫だよ」
「えらく簡単だな?」
「簡単か……朝野からしたらそうかもしれないけど、俺達からしたら不可能に近いことなんだ。それに俺達の目的が達成できるまで護衛してくれなんて厚かましいお願いができるほど、俺達の立場を理解してないわけじゃないからね」
「そこまで考えての願いか……その願い、叶えてやる!」
俺はそう言ってから魔法を発動する。
そうすれば勇者達7人が、その場に倒れこんだ。
俺が使った魔法は、[闇魔法]。
[闇魔法]には、相手の意識を一瞬だけ失わせることができるもがある。
その一瞬とは本当に一瞬で、一秒にも満たない。
そしてその魔法を連続して発動し続けることで、今の状況を作り出した。
けれどその代償として、凄まじい勢いでMPが減っている。
流石に長時間使い続けると、俺でもMPが尽きてしまうだろう。
「主、話はもうよろしかったのですか?」
「あぁ、こいつらも途中まで連れていく。少し待ってくれ」
「かしこまりました」
俺はセバスにそう言うと、7人に対して[パペット]を使ってみる。
そうすれば、7人が俺の考えた通りに動き出した。
なるほど。意識がなければ人間でも操ることができるのか。
思ってた以上に使えるスキルのようだ。
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