第45話 森

「凄いです!! 滅茶苦茶便利なダンジョンじゃないですか!」

「なるほど……だからトゥーエル王国の兵士が居たのか」


 先ほどまで嘔吐していたとは考えられないほど普通の状態に戻ったレオさんが、俺の話を聞いてそう言った。


「もう大丈夫なんですか?」

「何のことだ?」

「いや、さっき……」

「何のことだ?」


 レオさんは力強くそう言ってきた。

 うん、わかった。

 レオさんの中では何もなかったのだろう。


 それよりも今はこれからどうするかだ。

 ギルドを出るときヘルゲンさんが、「目的地は同じだから護衛してついて行けば大丈夫」て言ってくれた。

 だから俺はアーシャ達についていくしかない。


 俺はこの世界に来た時から迷子みたいなもんだから、どこであろうと問題ない。

 けれどここがオエステア大陸のどこなのかわからず、アーシャ達が迷子になってしまったら、目的地を知らない俺はかなり困る。

 となるとやはり町を探したほうがよさそうだな。


「とりあえず町がありそうなところまで移動しましょう」

「そうだな、今はとりあえず場所を把握したほうがいいだろうからな」


 俺はある程度歩けば町があるだろうと思ってそう言った。



ーーー


 正直なめていた。

 歩けばどっかのRPGゲームみたいに、道なり看板なりがあるだろうと思っていた。

 実際これまではそうだったからだ。


 けれどグラムパスの洞穴があった池を出発して3日。

 道どころか、未だ森を抜けることすらできていない。

 だが考えてみれば当たり前なのかもしれない。


 この世界の大きさはわからないが、元居た世界のようにほとんどの場所に人の手が加わっているわけではないだろう。

 人の手に触れず、ありのままの自然が多く存在してるのなら、このような場所があっても不思議じゃない。


 けれど景色が一切変わらないとなると、進んでいるとわかっていても不安になってくる。

 [メーティス]を使って進んできた道は正確にわかっている。

 もしもの時はグラムパスの洞穴があった場所に一度戻ってもいいかもしれない。


 俺がそんなことを考えながら歩いていると、前を歩いていたアーシャ達が急に立ち止まった。


「急に止まったりして、何かあったんですか?」

「……今いる場所の見当がついた」

「本当ですか?」


 ここまでこれといった目印はなかった。

 ただただ同じ森の景色が続いているだけ。

 それだけで見当がつくなど、信じられない。


「あぁ。恐らくここは……迷いの森だろう」

「そうね。私もそう思うわ」

「アーシャもです」


 どうやら3人の中で、この場所はほぼ間違いなく迷いの森と呼ばれる場所で決まりのようだ。

 名前からして予想はつくが、もしかしたら違うかもしれないからな。


「何ですか? その迷いの森っていうのは?」

「一度入った者は二度と森から出ることができないという場所だ。森がある場所的には目的地にかなり近いが、この森を抜けるのは不可能だろう」


 やっぱりそうなんだ。

 けど迷いの森、ね。

 なんか抜けられそうな気がするんだよな。

 少し試してみるか。


 俺はそう考えると、[完全鑑定]を発動する。

 そうすれば案の定、森を抜けるための正規のルートらしきものが見えた。

 

「少し俺についてきてくれない?」

「わかったです!」


 俺の言葉に、アーシャがすぐに賛同してくれた。

 アーシャ姉もレオさんも、頷いてくれいる。

 反対されないのは嬉しいが、なぜここまで信頼されているのか見当が全くつかない。


 俺はそんなことを考えながら、[完全鑑定]で見えている道を進んでいく。

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