第15話 新たな訓練方法
「やっとか」
俺達が城下町を出てから3日目。
日が暮れて、辺りは薄暗くなり始めている。
そんな中ついに俺達は町にたどり着いた。
ここにたどり着くまでに、レッドホーンラビットという種族名の魔物と何回も戦った。というよりコイツしか戦ってない。
体長は1メートルぐらいで、体は血のように赤く、鋭く尖った角が頭から生えているウサギだ。
ステータス的にはこんな感じだった。
★
種族 レッドホーンラビット
Lv 1
HP 25/25
MP 13/13
攻撃力 30
防御力 23
敏捷性 32
魔力 16
運 8
▼スキル
[脚力強化 Lv1]
★
召喚された勇者の俺よりウサギの方が、初期のステータスで運以外高いことにショックを受けたのは秘密だ。
でもこのレッドホーンラビット、城のダンジョンで戦っていた魔物より経験値がおいしかった。
そのお蔭でマリーのレベルを上げるという目的がある程度果たせたからな。
そんなことを考えていたら町まで来ていたみたいだ。
見た感じ城を出て最初に居た城下町とほとんど変わらない。
木造の建物が多く存在していて、所々ヨーロッパなどにあるような石の家がある。
辺りが薄暗くなってきていることもあってかほとんど人は歩いていない。
うん、困った。
「どうしよう?」
「どういたしましたか、主?」
「いやさあ、初めて来た町だから宿とかどうしようかなって」
「ああ、なるほど。確かにそうですね」
「あの、私この町来た事あるので宿なら知ってますよ」
「ホント、マリー!」
「はい。案内しますね」
「城下町のときもそうだったけど助かるよ」
「いえ、耀様の役に立てるなら容易い事です」
マリーはそう言いながら俺に微笑んでくる。
未だに何故マリーがこんなにも俺を慕ってくれているのかわからない。
正直マリーだけじゃなく静香以外わからないんだけどな。
考えてもわからないだろうから考えないけどさ。
とりあえずマリーが歩き出したので俺達もそれに続く。
マリーに案内されて来た宿を一言で言うなら、高そう。
明らかに周りの建物と作りが違うんだよな。
……そうだ、忘れてた。
マリーって王族じゃん!
てことは必然的に王族御用達の宿って事になるよな。
なら絶対に高いよな。
金貨1枚以上だと俺払えないんだけど。
嫌だ、嫌だ、眷族に払って貰うなんて主としての威厳がさらに落ちてしまう!
頼むから金貨1枚以下であってくれ!
マリーが王族であることは、町を出た日の夜にマリー自身から話された。
静香以外はあまり驚いていなかったから、大体気づいていたのだろう。
「いらっしゃいませ……姫様!」
「急にすみません。部屋をお借りしたいのですけど空いていますか?」
「も、もちろんでございます! 直ぐに案内いたします」
俺達が案内された部屋には屋根のついたベッドが5つ、風呂にトイレ、さらにはベランダらしきものまである部屋だった。
おいおい、嘘だろ。
初めて見たよ、屋根のついたベッド。
しかも風呂にトイレまで。
おそらく
絶対に高いだろ!
もうやだよ、これ以上主としての威厳がなくなるのは。
「それではごゆっくりお寛ぎください」
あれ?
お金は払わないの?
それとももしかしてマリーがもう払ってたとか!?
「マリー……ここのお金って」
「気にしなくて大丈夫ですよ。王族はここの宿に泊まるのはタダなので」
「えっ? こんな凄いところにタダで泊まれるの?」
「はい。国に納めるお金を安くする代わりに、この宿を王族が利用するときは全てタダにするという契約を交わしていますから」
そうなんだ。ならいくら泊まってもタダなんだしいいか。
やっぱりタダって言葉には弱いよな。
それにしても普通に泊まったらいくらぐらいになるんだろ?
ここは俺が元居た世界と違う世界だからな。
全く予想がつかない。
怖いから聞かないけどさ。
考えても見ろ、今泊まってる宿一日100万円もするんだなんていわれてその宿で寛げるか? 俺は無理だ。絶対に寛げない。
つまりそういうこと。
だから絶対に値段は聞かない。聞きたくない。
よっし! 値段のことはもう考えない。
兎に角ゆっくり休もう。
俺はそう決めると5つあるベッドの内、入り口から一番遠く、ベランダに一番近いベッドに腰掛ける。
やっぱり端っこがいいよな。
俺はバスとかに乗るとき、一番後ろの両端のどちらかに座りたいタイプの人間だからな。
外の景色を見ながらゆっくり寛ぎたいんだよな。
ここならベッドから外の景色も見えるし、端っこだし、丁度いいんだよね。
今日まで野営ばかりだったからベッドで寝られるのは滅茶苦茶嬉しいし。
「はぁ~~ぁ、ごめん俺先に寝るね」
「かしこまりました、主」
何かセバスとホワイト以外の3人で話してたような気がするけど、まあいいか。
とりあえず眠たい。
ーーー
翌日は早く寝たこともあってか、朝日が昇る前に目が覚めた。
ベッドには隣からルーチェ・静香・マリー・セバスの順に寝ている。
ホワイトは俺の足元で猫のように丸くなっている。
とりあえず俺は皆を起こさないように静かにベッドから出て、部屋の入り口の扉に向かう。
「ガウ」
「どちらにいかれるのですか?」
扉に手をかけたと同時に声がした。
後ろを振り返ってみると、セバスとホワイトがこちらを見ていた。
折角起こさないようにして行こうと思ったのに、意味無いじゃん。
「また少し試したいことができたからさ、この町に来るときに見えた平原まで行って来る。昼までには戻ると思うから待ってて」
「……かしこまりました」
「心配掛けてごめんね」
「いえ、大丈夫です。主のことを信じていますから」
「ガウ!」
「ありがとう。じゃあ少し行って来るね」
「はい」
「ガウゥ」
耀はセバスとホワイトにそう言うと部屋の扉を開けて出て行った。
ーーー
平原にたどり着いた俺は周りに人が居ないのを見て、さらに感じて確認する。そして深く深呼吸。
正直今から行おうとしている訓練は、周りに人が居たら行うことがおそらくできない。
だからセバスとホワイトには待ってて貰う事にした。
とてもついて来たそうな顔をしていたが今回は仕方ないのだ。
俺と同等のステータスを持っているってのが最低条件になるからな。
どう考えても最低条件が高すぎるよな。
兎に角確認もでき、リラックスもしたからそろそろ始めよう。
まあでも、できるかもまだわからないから試してみるだけなんだけどね。
まず土魔法で俺と全く同じ体格の人形を作る。
これは普通の詠唱魔法には存在しないから無詠唱によるものだ。
そして闇魔法でその人形を操作できるようにする。
闇魔法には動物などの生き物の精神に干渉できる魔法があったから、それの応用で何とかなる。ただこれも普通はできない。精神に干渉するといっても、ほんの少しだけ意識を逸らせたりしかできないものだ。
こうなってくると[無詠唱]がどれだけ優秀かわかる。
最後は確認だ。
[メーティス]!
<何でしょうか?>
今作った操れる人形を、[メーティス]が操ることは可能?
<可能です>
じゃあ、その人形を操って俺の動きについてくることはできる?
<そちらも可能です>
もう一つだけ、魔法は使える?
<主のMPを消費しても大丈夫なら、可能です>
うん、うん。
条件は全てクリアーされた!
これで俺はもっと強くなれる。
[メーティス]、俺とその人形を使って戦闘訓練をしてくない? 俺のMPを消費してもいいから魔法も使って。ついでにこの刀も一本渡すからさ。
<かしこまりました>
やっぱり訓練は本気でやらないと意味が無いからな。
しかも実戦形式の方が訓練になる。
さらに俺と同等の力を出せるんだ!
これなら力に驕らずに地を鍛えることができる。
よっし! じゃあ始めようか[メーティス]!
<かしこまりました>
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