第20話 覚醒者
俺は今、ギルマスであるヘルゲンの部屋にいる。
部屋の中には俺とヘルゲンしか居ない。
Sランク冒険者3人との模擬戦が終ってすぐに、真剣な表情のヘルゲンに「2人だけで話がしたい」と言われたためだ。
おそらく2人だけということから大事な話であることは予想できる。
ただ内容は全く想像できない。
ヘルゲンは俺の向かいのソファーに座りながら、コップに入れられた飲み物を飲んでいる。
コップを俺とヘルゲンの間にある机に置いて大きく息を吐くと、俺を見ながらゆっくりとヘルゲンは喋り始めた。
「聞きたいことがあるんだが、いいか?」
「いいですよ。俺の応えられる範囲なら全然」
「助かる。お前は……既に覚醒しているのか?」
覚醒?
何のことだ?
この世界では強くなると髪の毛の色が変わって、強くなれるとかそんな感じなのだろうか?
ヘルゲンは俺が首を傾げているのを見て小刻みに頷いている。
「やっぱりな」
「やっぱりというのはどういうことですか?」
「俺はお前がまだ覚醒していないと見ていた。今の反応からするに、覚醒自体知らない見たいだがな」
「その覚醒とは何なんですか? スキルとかそんな感じのものなんですか?」
「いや、スキルではなく称号だ」
「その称号? を持っているのと持っていないので違いがあるんですか?」
「大有りだ! この称号はステータスを倍化する。それだけじゃない、この称号はその者の能力を、文字通り覚醒させる」
俺の感覚が狂い始めているだけで、ステータス倍化は普通に強いだろう。
この世界での強者とはステータスが高い者のことを指すだろう。
現に【勇者】もステータス倍化だしな。
けれど、能力の覚醒。
コイツは【勇者】には無い能力だ。
言葉のまま受け取るなら、能力には上の段階がり、その段階に上げることができる。
または眠っている能力を目覚めさせる。
このどちらかということになる。
「その、能力の覚醒というのは、どういったものなのですか?」
「簡単に言うと、新しいスキルか魔法を手に入れることができる」
どうやら眠っている能力を目覚めさせるって方だったみたいだ。
うん? 待てよ。
……新しいスキル
「その新しいスキルや魔法というのは、この世界に存在しないという意味ですか? それとも元々持っていなかったという意味ですか?」
「両方だ。【覚醒者】という称号を持っていればの話だがな」
待ってくれ!
両方?
あったぞ、そんな特殊なスキル。
もう無いけど。
兎に角確認だ。
ステータス
★
名前 朝野 耀
性別 男
Lv 37
HP 10443/10443
MP 12541/12712
攻撃力 12010
防御力 12355
敏捷性 12867
魔力 12490
運 1917
称号
【異世界人】【勇者】【神(仮)】【神級精霊の契約者】【神級悪魔の契約者】
眷属
『セバス』『ルーチェ』『
『マリーヌ・ド・トゥーエル』
▼スキル
[剣術 Lv7][棍棒術 Lv1][弓術 Lv1][投擲 Lv5]
[格闘術 Lv6][火魔法 Lv5][水魔法 Lv5][氷魔法 Lv6]
[風魔法 Lv9][土魔法 Lv7][雷魔法 Lv6][闇魔法 Lv7]
[光魔法 Lv6][回復魔法 Lv5][結界魔法 Lv5]
[物理攻撃耐性 Lv4][魔力操作 Lv5][魔力感知 Lv4]
[脚力強化 Lv3]
▼固有スキル
[勇者][眷属化][咆哮][氷装][分解]
▼エクストラスキル
[精霊魔法 神級][悪魔魔法 神級][無詠唱][二刀流]
▼オリジナルスキル
[完全鑑定][完璧偽装][スキル・魔法コピー][ステータス自乗]
[経験値自乗][メーティス][ステータス略奪][スキル成長促進]
★
★
名前 セバス
性別 男
Lv 28
HP 5160/5160
MP 5238/5238
攻撃力 4715
防御力 5190
敏捷性 4964
魔力 4763
運 100
称号
【神級悪魔】【眷属】
▼スキル
[格闘術 Lv2][投擲 Lv4][火魔法 Lv3][水魔法 Lv5]
[氷魔法 Lv3][風魔法 Lv3][土魔法 Lv3][雷魔法 Lv4]
[闇魔法 Lv5]
▼エクストラスキル
[悪魔魔法 神級]
★
★
名前 ルーチェ
性別 女
Lv 28
HP 4635/4635
MP 4990/4990
攻撃力 4963
防御力 5088
敏捷性 4715
魔力 5365
運 100
称号
【神級精霊】【眷属】
▼スキル
[棒術 Lv3][火魔法 Lv4][水魔法 Lv4][氷魔法 Lv5]
[風魔法 Lv5][土魔法 Lv3][雷魔法 Lv3][光魔法 Lv5]
▼エクストラスキル
[精霊魔法 神級]
★
★
名前 橘 静香 (たちばな しずか)
性別 女
Lv 28
HP 1932/1932
MP 2075/2075
攻撃力 1821
防御力 2042
敏捷性 1944
魔力 2045
運 26
称号
【異世界人】【勇者】【最上級精霊の契約者】【眷属】
▼スキル
[剣術 Lv3][風魔法 Lv3][土魔法 Lv3][光魔法 Lv2]
[回復魔法 Lv3][結界魔法 Lv3]
▼固有スキル
[勇者]
▼エクストラスキル
[精霊魔法 最上級]
★
★
名前 ホワイト
種族 グラキエースレーベ
Lv 28
HP 2833/2833
MP 2819/2819
攻撃力 3058
防御力 2967
敏捷性 3045
魔力 2864
運 60
称号
【最上級精霊】【眷属】
▼スキル
[火魔法 Lv2][氷魔法 Lv4][雷魔法 Lv4][光魔法 Lv2]
▼固有スキル
[咆哮][氷装]
▼エクストラスキル
[精霊魔法 最上級]
★
★
名前 マリーヌ・ド・トゥーエル
性別 女
Lv 11
HP 427/427
MP 435/435
攻撃力 438
防御力 462
敏捷性 424
魔力 440
運 15
称号
【眷属】
▼スキル
[火魔法 Lv1][水魔法 Lv1][風魔法 Lv2][作法 Lv3]
★
【覚醒者】なんて誰も持ってないな。
それにしてもこの世界に存在しないスキルや魔法を手に入れることができるか……
【覚醒者】は厄介そうだな。
どんな特殊なスキルや魔法を持っているかわからない。
しかも世界に存在しないスキルってことは【神(仮)】も持っているって事だろ。
<【覚醒者】は【神(仮)】を持っているとは限りません>
どういうこと?
だって【覚醒者】は世界に存在しないスキルを手に入れることができるんでしょ。
なら俺が[スキルの種]で、世界に存在しないスキルを手に入れた副産物として獲得した【神(仮)】だって持ってるくない?
<称号【覚醒者】によって手に入るスキルや魔法はこの世界に存在はしませんが、新たに作り出された訳ではないからです>
ごめん、全然意味がわからない。
つまりどういうこと?
<簡単に言いますと、主は自分の意思で願ったスキルをこの世界に作られました。ですが【覚醒者】では、自分の意思とは関係なく、さらにどんなスキルや魔法が手に入るかわかりません。ですので【神(仮)】を持っているとは限らないのです>
簡単に言ってくれたみたいだけど、全然意味がわからない。
でも【覚醒者】は【神(仮)】を持っていない。
それさえわかればいいや。
それよりもどうしてヘルゲンは、【覚醒者】の話をしてきたのだろう?
「どうだ? 今ステータスを確認してたんだろ?」
「はい。ですが【覚醒者】なんて称号はないですね」
「まあ、覚醒してないのに称号に【覚醒者】があるはずないんだけどな」
「それにしても、いきなり覚醒の話なんってどうしたんですか?」
「模擬戦のSランク冒険者3人がいただろ」
「はい、エルノさん達ですよね?」
「あの3人な……全員覚醒してるんだよ」
「えっ」
3人が3人とも覚醒している?
だからあんなに強かったのか!
でもスキルや魔法は特殊なものを使ってる感じじゃあなかったぞ?
「ヨウ、お前はな、覚醒すらしていないのに【覚醒者】3人を相手にして勝った。3人に覚醒した能力の使用を禁止していたとはいえ、これは異常だ。いくら勇者だろうと、覚醒していなければ【覚醒者】1人相手でも勝つことはできない」
ヘルゲンは苦笑い気味にそういってきた。
俺も苦笑いしかできないよ。
他の人にそこまで言われたのは初めてだからな。
勇者でも【覚醒者】には勝てないか。
……なら何故他の世界から勇者を召喚した?
一々勇者を育てるより、【覚醒者】を集めた方が合理的だ。
「あの、【覚醒者】の方が強いのに何で勇者を召喚するんですか?」
「それを俺に聞くか?」
ヘルゲンは苦笑いのままだ。
気になったから聞いたものの、ヘルゲンは召喚自体に関わっていない。
関わっていないなら何故召喚するかなんてわかるはずがない。
聞いてから気づくとか……
「まあでも、覚醒の内容じゃないか多分」
聞いてみるもんだった。
答えがかえってきたよ。
「覚醒の内容ってのはどういうことですか?」
「ああ、さっきも言った通り【覚醒者】は新たなスキルか魔法を手に入れる。だがそれは人によって違う。例えば、俺が覚醒すれば手に入れることができるのはスキルか魔法のどちらか一つだけだ。けれどヨウ、お前が覚醒すれば、スキルと魔法両方を手にすることができる可能性がある。これは勇者であるお前と勇者でない俺との差だ。おそらく勇者を召喚する理由はこの差にあるだろうな」
「なるほど」
確かに勇者の方が有能だ。
他にない力を、1つ持っているのと2つ持っているのとでは、雲泥の差があるからな。
メリットとしては十分だが、それでも別の世界から召喚するほどではないような気がするな。
絶対手に入るってわけではないみたいだし。
なら他にも理由があったと考えておくか。
「その覚醒の内容は、勇者以外に2つ手に入れることのできる人はいないんですか?」
「いるぞ、魔王も2つ手に入れることができるらしい。後転生者だな。神級の精霊と悪魔も2つ手に入れることができるといわれているが……誰も契約に成功していないからわからない」
「中々いるんですね」
「そうでもない。魔王は何人いるかわからないが、転生者はそんなに多くはない。神級の精霊と悪魔は1体ずつしかいないしな」
転生者なんてテンプレがいるんだ。
いつか会えたら嬉しいな。
でもさらに強くなれるなら、覚醒の条件が気になってくるな。
「覚醒する条件って何なんですか?」
「お、【覚醒者】を手に入れたくなってきたのか?」
「話を聞いていたら少し興味を持ってしまって」
「そうか。【覚醒者】を手に入れる条件はレベルだ」
「レベルですか?」
「ああ。だが人によって必要なレベルは違う。50の奴もいれば、100の奴だっている。要は兎に角レベルを上げろってこった」
「それはまた曖昧ですね」
「まあな、でも頑張ってみろ」
「そうですね。持っていて損はなさそうなので、目指してみます」
「おう」
ヘルゲンはそう言うと、机の上のコップを手にとって飲み始めた。
俺は自然に顔が緩んでいる。
どんな力かわかないが特殊な力を手に入れられることがわかったからな。
頑張ってレベルを上げるとしよう。
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