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- ★★★ Excellent!!!北風と太陽。「扉」を開けるのは、もちろんこちらですぜ!
この物語にはいろいろなキーワードが出てきます。
念力、親子、友だち、孤立、仔猫、本、月、懐中時計、そして卒業式、色紙、兄妹、成長。
その一つひとつはありふれた言葉ですが、テーマである「扉」を開くために欠かせない、とても重要な言葉たちなのです。
超能力が主体ではありません。
でもその異能を持って生まれてしまったために、閉ざさずを得なかった「扉」。どうやったら開け放してあげられるのか。
主人公の少女は悩み、焦り、苛立ちます。
その微妙な、繊細な心の動きを見事な筆さばきで見せてくれ、一本の温かな小説として練り上げられています。
「扉」は力では開きません。
対価を求めぬ至極の愛。
読了後には、誰…続きを読む - ★★★ Excellent!!!予定調和の物語を装飾して重厚感を高める作風 ―― それが作者の真骨頂
殻に閉じこもった少年に接することで、彼の心を開こうとする少女。紆余曲折がありながら、両親や親友、さらに、亡き祖母に助けられながら、彼女はミッションをやり遂げ、最後は静かながら幸せなエンディングを迎える。
言い方は悪いが、「どこかで聞いたようなストーリー」。その設定を見た瞬間、展開やエンディングもある程度予想が付く、いわゆる「予定調和物」。普通に考えれば、お世辞にも食指が動くものとは言えず、可もなく不可もなくの評価が付いて回る。
しかし、作者の小説についてはそんな一般論が当てはまらない。それは、ストーリーの幹はもちろん枝葉の部分もさほどいじらないにもかかわらず、物語が重厚で興味深いものに変…続きを読む - ★★ Very Good!!万人受けする普遍のテーマへのチャレンジ
社会から遊離してしまった少年と、それを思いやる少女の恋愛小説である(男女の友情とあるが、この内容では恋愛にしたほうが良いであろう)。
作者は小説を書き始めて日が浅いと思われるが、自分の経験と学んだ文章を組み合わせてテーマに沿ってこの分量を書ききっており、まずは最初のハードルを超えた作品と評価したい。
特に真由美の心情は詳細に描かれており、やや早熟過ぎるものの、迷いを抱えつつ前向きにそれを解決する姿は魅力的である。また家族関係がしっかり描写され、その中での真由美と幸也の立ち位置が明確であるため、2人の距離感は真に迫った、厚みを持つ内容に仕上がっている。
その一方で、文体と展開には課題が多く残さ…続きを読む