第67話

2学期がやって来た。

日曜日のよく晴れた午後、克樹と杏奈は人気の恋愛映画を見て、2人で街を歩いていた。

「良かったー!最後めちゃ切なかったよ」

杏奈は既に半泣きである。

それは超人気アイドルとその彼氏の禁じられた愛の物語である。アイドルはあくまでもファンのものなので、恋愛は御法度だ。でも恋する気持ちは抑えられない。

「普通っていいな」

克樹は笑って、そっと杏奈の手を握った。杏奈もドキドキしながらその手を握り返す。

「うん」

「杏奈。バッティングセンター行っていいか?」

「克樹の頭から野球の事が離れる事はないんだね」

「お前もだろ?」

「私は克樹の事だけ考えてるよ。克樹だけを見てる」

杏奈の足がふと止まる。

杏奈の目には行き交う人達の姿も映っていない。真っ直ぐな目で克樹をずっと見つめている。克樹も立ち止まって杏奈を見る。

その目に宿る哀しい光を杏奈は見ていた。

「杏奈。そろそろ行こうか」

「……そうだね」

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