第15話

日曜日の朝、待ち合わせの場所に向かう克樹の足は重かった。

彩加の小さな涙を見てしまったからである。

待ち合わせの時間より10分早く来ると、もう杏奈は先に来て待っていた。

「おはよう。杏奈」

克樹は咄嗟に笑顔を作った。

「おはよう。寝不足?顔色がなんだか」

「バレた?昨日、英語の問題が分からなくて

さ」

克樹は明るく返す。

「そう言う時には写メ送ってよ。それで大丈夫だったの?」

「ああ。何とか解いた」

「良かった」

杏奈はホッとしたように笑った。


英語の問題が解けない時はいつも佑里が教えてくれた。

「もう。しょうがないな…… 」

そう言って苦笑いしながらもいつも隣で教えてくれた。

昨日、彩加が見せた小さな涙が佑里の顔と重なった。

いけない。今は杏奈の事を考えないと。

映画を観ながらも内容が頭に入って来ない。

ふと隣を見ると杏奈は真剣な表情で映画に見入っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る