第45話

「ごめんなさい。それは受け取れない」

克樹ははっきりそう言った。

「理由はお前が佑里の妹だから。俺はお前とだけは付き合えない。だから本当にごめん」

克樹はゆっくり頭を下げた。

「今でもお姉ちゃんが好きだから?」

彩加の言葉を聞いて克樹はゆっくり首を振る。

「俺には彩加自身を見る事が出来ないから。どうしても佑里の面影を重ねてしまう」

克樹を見つめながら、彩加の頬に涙が伝い落ちる。

「そんなの酷すぎるだろ。お前は彩加であって佑里じゃないんだから」

「馬場ちゃん……」

「でも璃来ならちゃんとお前自身を見る事が出来るから。だからアイツの事をちゃんと考えて欲しい」

「克樹……!」

彩加は堪らなくなって、克樹に抱きついていた。

「彩加、ごめん……本当にごめん」

その時、克樹の瞳から涙が溢れ落ちた。克樹の苦しみがマトモに彩加の胸を直撃していた。

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