第10話

森里高校は順調に勝ち進んでいた。

そしてベスト16に入った。

克樹は1年生ながらエースピッチャーとして投げていた。

じっとしていても汗が滴り落ちて来る。

克樹はキャッチャーの原沢透のサインに頷くと、大きく振りかぶった。

彩加はベンチでスコアボードに記録を続けていた。

璃来は応援席で息を詰めてこの状況を見守っている。

試合は8回表になっていた。

森里高校は後攻である。

現在は5対7で森里高校がリードしている。


森里高校は5対8でベスト8に進んだ。

実は森里高校がベスト8に進んだのは20年ぶりの事である。

生徒達はバスを貸し切って応援に行く予定になっていた。


「みんないよいよ明日はベスト8だが、気負う必要はない。ここまでやって来た練習を信じて試合に臨めばいい。分かるか?」

「はい!」

監督の言葉に選手達は力強く頷いた。

こうして選手達は部室の中に入って行った。

1年生は後片付けが残っている。

彩加はボールを磨いていた。


「頑張ってね」

彩加は帰ろうとする選手一人一人に声を掛け

た。

彩加の笑顔は人を和ませる。

可愛いだけでない優しい笑顔だ。

「ありがとう。彩加ちゃん」

「頑張るよ」

部員達は彩加の言葉に思わず笑顔が零れた。


だが森里高校はベスト4に進む事は出来なかった。

克樹は投げて、投げて、投げ抜いた。

部員達全員が泣き、彩加も一緒に涙を零した。

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