第53話

そろそろ夏の便りが聞こえる時期になる。克樹達森里高校にも、夏の甲子園予選大会のレギュラー発表の日がやって来た。部活終了後に監督からその言葉を聞き、部員達の間に歓声が上がる。克樹はエースで4番の出場となった。

「頼むぞ。馬場」

監督から力強く肩を叩かれ、克樹には自然と力が入る。

「はい」

しっかりと返事を返すと,監督の向こうに彩加の姿が見える。キャッチャーはキャプテンの3年生、星崎玲だ。

スタンティングメンバーは去年の練習試合の時とほぼ同じである。違うのはセカンドが1年生の秋山修哉に代わっている事だ。

「やったね。馬場ちゃん!」

部室へと向かう克樹の肩を彩加がポンと叩く。彩加はまるで自分の事のように満面の笑顔を見せていた。

弾けるように眩しい。

「ああ!」

克樹も自然と笑顔になる。

「今年こそは甲子園行くぞ!ね、星崎先輩」

そう言いながら仲間達と肩を抱き合う。

「ああ、勿論だ。俺達はラストチャンスだからな」

星崎の声にも力が入っている。

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