第6話

「へえー。可愛い子じゃん」

璃来は克樹が見せた待ち受けに入れた写真を見て言った。

胸までのロングヘアがよく似合う。

「だろ?花崎高で野球部のマネージャーやってる子なんだ」

克樹はそう言って少し笑った。

「前に進む覚悟決めたんだな」

「佑里はもういないんだ」

璃来は黙って克樹の肩を抱いた。


克樹は家への帰り道でふと立ち止まって星を見上げた。

佑里……

今でも一人になったら考えるのは江見佑里の事だ。

克樹の2歳年上の恋人だった。

中学2年のまだ幼い恋だったけど、本気の恋だった。

桜が散った頃、いつも通りに学校へ行って……帰り道にそのまま帰らぬ人になった。

雨の日のスリップ事故で車に跳ねられ即死だった。

別れの言葉も言えなかった。


今でも胸を締め付けられるような想いは消えていない。

佑里の事を想うたび切なさが込み上げて来る。

佑里……

目尻が熱くなって来る。

もう逢えないのに。

もう届かないのに。

目を閉じれば浮かぶのは佑里の顔だ。

弾けるような笑顔が眩しくて……

ちょっと剥れた顔は堪らなく可愛くて。

その瞳も声も髪の毛の先まで愛しかった。

でももう決めたのだ。

前に進む事に。

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