第30話

佑里の部屋はそのままになっている。

彩加は今は主人を失ったその部屋に入ってベッドの上に座っていた。

薄いピンクのシーツはピンと張っている。

フローリングの6畳の空間はとても静かで木目調のタンスの上には可愛い真っ白な犬のぬいぐるみが大事そうに飾ってある。それが克樹からの誕生日プレゼントだと言う事を彩加は知っていた。

お姉ちゃん……

……彩加、見て!可愛いでしょ。克樹がくれたの。もう名前もつけたのよ。

へえー。なんて言うの?

エルよ。

佑里がそう言って彩加に犬のぬいぐるみを見せてくれた。

それは佑里の17歳のbirthday。

その時の佑里は弾けるような笑顔で彩加を見ていた。

お姉ちゃん……

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