第28話

同じ頃、花崎高校野球部のグランドでも森里高校との練習試合のレギュラーメンバーの発表がされていた。ズラリと並んだ部員達の中に佐久間蒼(あお)の姿がある。蒼は2年生で杏奈の兄だ。ピッチャーをしている。杏奈が野球好きになったのはこの蒼の影響だ。

蒼はピッチャーとして登板する事になった。

「おめでとう。お兄ちゃん」

「当然だろ」

蒼は素気なく返したが、やっぱり嬉しそうである。

そうしているうちに次々と部員達が部室の中に入って行く。

「杏奈ちゃん、お疲れ」

「お疲れ様です。三原先輩」

他の部員達も次々に部室のロッカーの前に歩いて来る。

三原は土と埃に塗れた練習用の白いユニフォームを脱ぎながら、机に向かって日誌を書いている杏奈を気にしていた。

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