第24話

「今はまだ、言わないほうがいいと思います。ギィがどんな人物なのか、はっきりわからないし」


エミリアンの恋した相手を疑うことなどしたくないが、この美しい人の秘密を知れば、ギィが見世物にしないとも限らないのだ。

マスコミに近いところにいる男だし。


「ギィは、色々と詮索するようなことを聞いてきたんですか?」


「いいえ」


「だったら、自分から話すことはしなくてもいいでしょう。ギィだって、どんな過去を持ってるかわからないですよ。もし犯罪歴があったらどうします? 聞きたいですか?」


「いいえ!」


首を横に振るエミリアンは、不安そうに目を閉じる。


「旦那様と奥様がお待ちですよ。さ、行きましょう」


ロシェルはエミリアンの手を取って、歩き出した。




☆☆☆




リシャールの職業はガーデナーだ。デュレー家の庭園は、彼が一人で手入れをしている。

家で仕事をしていることも多いが、よその庭の手入れもする。ガーデニング関係の本も、何冊か出版していた。


エリーズはイラストレーターで、今は花にまつわる詩集のイラストを描いている。デュレー家にない花はリシャールに頼んで取り寄せてもらったり、写真を探したりしていた。


二人は今日は外出しているため、屋敷にはエミリアンとロシェルしかいない。


今日のおやつは洋なしのタルトだ。

ロシェルがタルトを作っている間、エミリアンは庭を散歩することにした。


ホワイト・ガーデンの方へ歩いて行くと、木々の間に小さな影を見た。


「ギィ……?」


子供のように小さな人影だったと思ったが、ここは一般開放しているわけではない。誰かいるとしたら、ギィしかいない。


エミリアンは期待に笑みを浮かべて、アーチを抜けた。


お茶を楽しむためのテーブルと椅子がある。その椅子に、甘い顔立ちの青年が座っていた。


年は、ギィより少し下だろうか。銀髪にグレーの目。懐かしいような気がするのは、気のせい? だって、会ったこともない人なのだから。

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