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第55話
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シルヴィの魔法で、ギィは旅立った日の同じ時間に、元の世界へ帰してもらった。
そうでなければ、一週間以上も行方不明になっていたことになる。有名人のギィなので、大きな事件になってしまうからだ。
レネックやミュレルといった、別次元に存在する国のことなど信じてはもらえないだろうし、ギィとしても誰にも話したくはないので助かった。
★★★
クリスマスイブは、ファンクラブ会員のためのライブがあった。
それが終わると、会報誌に載せるインタビューが始まった。
『ギィさん、お疲れ様でした。今年のライブは、これがラストでしたね』
『うん。新曲をみんなに届けられて、良かったよ』
『ああ、タイトルは「エミリアン」でしたね。どういう意味なんですか?』
『恋人の名前』
『えっ!? 恋人? いいんですか、そんなこと言っちゃって?』
『僕だけのね、花の名前だよ。金色のバラなんだ』
『金のバラに、雪ですか? 歌詞も今までになく、メルヘンな感じですよね』
『うん。どうかな、どんな感じ?』
『私は大好きです。最後の「君の願いならなんだって叶えてあげる。この次は……」ってところがいいですね。この次は、なんなんですか?』
『内緒』
『ギィさんの愛情を感じましたよ。聞いてて、胸があったかくなるって言うか。涙が出ました』
『嬉しいよ』
『本当に、恋人のために作られたんですか?』
『そう。今は会えないんだけどね。春になったら会えるから。だから、僕は、春を待っているんだ』
完
金色の薔薇 リリアンジュ @liliange
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