第26話
「キスが好きなんだって。誰とでも、キスするらしいよ」
優しく触れられた唇。あんなふうに、誰にでもキスをする……?
「そ、そんな話は聞きたくありません。あなたはギィの友達なんじゃないんですか? どうして、そんな、意地悪なことばかり……」
エミリアンの目に涙が浮かび上がってきた。それを見て、ローランはきつい口調で言う。
「友達なんかじゃない。僕はギィが嫌いなんだ」
軽く目を見開き、エミリアンはローランを凝視した。そんな様子を面白がるように、今度はローランはにっこりと笑う。
「だから、ギィを好きになりたいんだ。ギィのこと、話してよ」
人に話すようなことは何も知らない。ただ、ギィはいつも気遣ってくれて、優しくて、愛情を注いでくれる。はっきりと言われたわけではないが、全身で愛を示してくれるのだ。
一緒にいるだけで愛を感じる。それは間違っていないと、エミリアンにはわかっていた。
会いたい。今度はいつ会えるのだろう。こんなに思っているのに、ギィは今頃、知らない女の子とキスをしていたりするのだろうか……。
声もなく、エミリアンは泣いた。
ローランは面倒くさそうに溜め息をつくと、エミリアンの顔をのぞき込んだ。
「僕と一緒に来ない? 僕なら、君に『永遠』を与えてあげられるよ」
危ないものは感じなかったが、エミリアンはローランが怖くなった。
「行きません」
この人と一緒にいてはいけない。エミリアンは立ち上がると、屋敷のほうへと駆け出した。
残されたローランは、ぼんやりと呟いた。
「本気で誘ったわけじゃないさ。僕が欲しいのは、一人だけだからね」
☆☆☆
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます