第37話

「心に抱えてないで、なんでも話して」


ギィに抱きしめられながら、ギィの胸の音を聞く。ギィの音。


「さっき……カロリーナに色目を使った」


「え!?」


「シルヴィって誰……?」


やきもちか。エミリアンが可愛くて、ギィは抱いている腕に力を込める。


「僕はフェミニストなんだ。でも、嫌な思いをさせたなら、ごめんね。

シルヴィは、友達だよ。君に会うきっかけをくれた。このバラ。これが、君に会うための鍵だ」


ギィはバラのブローチを見せ、テーブルの上に置いた。


ギィは別世界からやって来る。魔法の力を使って。シルヴィがいなかったらギィに会うことはなかったのだと考えると、エミリアンは感謝の気持ちが沸き起こるのを感じた。


「ギィが私だけに優しいんだったら、それは嫌です。みんなに優しいギィが好き」


さらさらの金髪を撫でながら、ギィはエミリアンのこめかみにキスをした。


(大事にしたい)


触れるのも不安になるくらいに愛しい。そんな気持ちは、初恋のようだった。


現実のことをすべて忘れて、愛する人のことだけを考える。自分にそんなことが出来たのだと、ギィは驚いていた。

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