第51話

☆☆☆




「ギィ、落ち着いて。エミリアンは寿命がきたの」


「寿命って!?」


「気づいてるかも知れないけど、エミリアンは人間ではないの。この子は、花なのよ」


「花……?」


「私がデュレー家の庭に埋めた種から咲いた、バラなの」


移動の間に聞いた短い話。けれど、すぐにギィは納得した。


(ああ、だから、エミリアンには性別がなかったんだ……)




☆☆☆




人間ではないから、一緒に生きて行くことは叶わないのだろうか。

寿命がきたということは、死ぬということ?

エミリアンが、いなくなる……。


「ギィ、しっかりして」


つつかれて、ギィははっとした。レネックのデュレー家のドアの前だ。エミリアンを抱いていたので、落としたりしないように腕に力を込めた。


シルヴィがブザーを押すと、すぐにロシェルが顔を出した。ぐったりとしているエミリアンを見て、悲鳴を上げる。リシャールとエリーズも驚いて飛んで来た。


ギィはリシャールに殴られることを覚悟していたが、彼は落ち着いていて、先に歩いてエミリアンの部屋のドアを開けたり、エミリアンをベッドに寝かせてくれたりした。


エリーズのほうが動揺していた。唇を震わせながら、涙を見せないようにしていた。

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