第11話

「ロシェル、彼はギィと言って、私に会いに来てくれた吟遊詩人なんです」


ギィを信じて疑わないエミリアンは、花のような笑顔で彼を紹介した。


「はあ!? 何言ってんですか。この現代に吟遊詩人なんているわけないですよ。だまされちゃいけません。

こいつは変質者です! 詐欺師です!!」


黒髪黒目の、ギィの世界では見慣れているような容姿の女の子だが、当然ギィのことなど知らない。

若い女の子に変質者だなんて初めて言われたと、ギィはショックを受けた。


「吟遊詩人なんて、いるわけない……?」


「そうですよ。あれは物語や映画の登場人物。

こいつはきっと、エミリアン様の美貌を聞きつけてちょっかい出しに来た、不良ですよ」


ロシェルからはきつい視線、エミリアンからは泣きそうな視線を向けられて、ギィはうろたえた。


「僕はミュージシャンなんだ。吟遊詩人ていうのも、嘘ってわけじゃないだろう?」


「ミュージシャン? 三文役者の間違いでしょう?」


可愛い顔して、きついことを言う……。


確かに演技は勉強中だ。それでも三年前に出演した映画のときより、今のほうが格段に上手くなっている自信はある。評価も受けているし。

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