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第28話
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最近エミリアンは、夕食後のお茶の時間が終わると、すぐに休むようにしていた。寒くなってきたので、風邪の予防のためだ。
レネックには四季はあるが、温暖なので、冬に雪が降ることはない。それでも初めて冬を過ごすエミリアンには、充分な注意が必要だと誰もが思っていた。
ここ二、三日、エミリアンの元気がない。ローランとか言う、おかしな男がやって来たことは、みんな知っていた。エミリアンが話したのだ。
エミリアンの好きなギィを、嫌っているローラン。ギィへの腹いせに、エミリアンに何をするかわからない。リシャールはそれが心配だった。
(あの男……よけいな種をまきやがって……)
リシャールもギィのことを嫌っていた。うさんくさい、怪しい奴に見えるのだ。
けれどエリーズは違った。彼女はギィとエミリアンが好き合っていることを、ロシェルから聞いている。もしかして、ローランもエミリアンのことを好きなのでは? だからギィのことを嫌っているのではないか。そう思っていた。
エミリアンに何をするかわからないという点では、心配なのは一緒だ。
二人は警備を強化したほうがいいかと話し合ったが、すぐにそれは無駄だという結論を出した。相手は、人の力ではないものを持っているらしいからだ。
このまま平穏に冬を越せますように。リシャール、エリーズ、ロシェルの願いはそのことだけだった。
★★★
自室へ戻ったエミリアンはドアを閉めたとたん、背中から抱きしめられた。広い胸はギィのものだ。振り返らなくてもわかる。胸に回された手に、自分の両手を重ねて、ギィの名前を呟いた。
「エミリアン、会いたかった。何百日も会ってない気がするよ」
ギィはエミリアンの身体の向きを変えて、花びらのような唇に唇で触れようとした。
が、エミリアンが微かに俯いたことに気づき、躊躇した。けれどほんの一瞬のことで、強引に唇を奪う。
エミリアンはおとなしく、ギィの腕の中でじっとしていた。
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