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第22話

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エミリアンは目を開けた。たいてい、いつも同じくらいの時間に目が覚める。

昨夜はギィに、ギィの世界の色々な国の話を聞き、いつの間にか眠ってしまった。


ギィ……。


隣にいたはずなのに、彼の姿はなくなっていた。

いつも突然現れて、あっという間にいなくなってしまう。


エミリアンは淋しくなって、ギィが寝ていた場所に触れてみた。シーツがまだ温かく、ぬくもりを感じる。今しがたまでいてくれたのだと思うと、嬉しかった。


ベッドを出て、顔を洗っていると、ロシェルがやって来た。


「エミリアン様、おはようございます。今日もいいお天気ですよ。朝は少し寒いですけどね」


ロシェルはエミリアンの着替えを手伝い、ラベンダー色のワンピースを着せた。その下にはズボンだ。


「さ、ズボンもはいて。風邪をひかないようにしなくちゃ。うん、お目々の色と合っていて、今日も可愛いですよ♪」


ロシェルはデュレー家のメイドで、主な仕事は掃除と洗濯だ。今年の春からはエミリアンの世話もしている。あとは、ガーデナーであるリシャールを手伝い、庭の水まきとか。


イラストレーターであるエリーズは家で仕事をすることが多く、料理が得意だ。なので、ロシェルはエリーズを手伝ったり、お菓子を作ったりもしている。


「朝食の用意も出来る頃ですよ」


メイドといっても、ロシェルもこの屋敷の一員なので、食事やお茶は一緒にとる。今朝も早くに起きて働いている彼女は、お腹が空いたと言って、エミリアンを急かした。


「あの、ね……ロシェル。昨夜、ギィが来てくれたんです」


ギィの名前を聞き、ロシェルは足を止めた。露骨に不機嫌な顔をする。


「あの詐欺師ですか!?」


「詐欺師じゃありません」


「いつ来たんですか? 何を話したんですか?」


エミリアンの白い顔が、ほんのりと赤みを差していることに気づいた。


「昨夜遅くに。ギィが行った、色々な国の話を聞きました」


「それで!?」


「一緒に、ベッドで――」


「一緒に寝たんですか!? 何もされなかったでしょうね!?」

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