第21話

「僕だって心配してる」


怖いくらい真剣な顔で言われて、エミリアンはギィの腕を掴む手に力を入れた。


「本当に大丈夫です。心配かけて、ごめんなさい」


いきなりキスしたのはギィだ。手順を踏むべきだったかと考えながら、けれど、一度触れてしまったからには「もっと」と欲が出てきてしまった。


ギィはエミリアンを抱き上げ、ベッドに運んだ。


「横になっていたほうがいい」


離れるギィの袖口を掴み、エミリアンは小さな声で尋ねた。


「もう……行っちゃうの?」


甘えるような言い方が可愛くて、ギィはエミリアンの頭を撫でる。


「行かないよ。時間がくるまで、ここにいる」


「どのくらい、いられるんですか?」


「それは僕にもわからないんだ」


見つめ合うだけで気持ちが通じた。お互いに強く思っている。

ギィはエミリアンを抱きたくて仕方なかった。といっても、ただ触れていたいということだ。

大切にしたいから。


「エミリアン、横に入ってもいいかな?」


下心はなかったが、それは通じるだろうか。


エミリアンは笑顔で掛け布団を持ち上げた。


靴とジャケットを脱いで、ギィは布団の中に入った。エミリアンの頭の下に腕を通し、抱き寄せる。エミリアンは素直にギィの胸にもたれてきた。


「誰かと一緒に寝るのは初めてです」


「リシャールやエリーズとは?」


「ありません」


「子供のときも?」


「……はい」


「もしかして、キスも初めてだった?」


恥ずかしいのか、エミリアンはギィの胸に顔を伏せて、小さく「はい」と答えた。


エミリアンからは、甘い花の香りがした。ギィの好きなバラの香り。


「光栄だな」


ギィはもう片方の手でエミリアンの髪を撫で、この時間が長く続くことを祈った。



そして、その願いは朝までという今までにない長い時間で、叶えられたのだった。

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