第3話
「ありがとう」
ギィはどんな女性もメロメロにさせてしまう、甘い美声と甘い笑顔でシルヴィを誘惑した。
いや、誘惑するつもりなどなく、無意識に自分の武器を使ってしまっただけだ。
少女は真っ赤になり、早口にまくしたてる。
「わ、私が勝手にプレゼントしたいだけなの。だって、ギィが大好きだから。
ギィはきっと、たくさんの人に贈り物をもらってるでしょう? だから、私にしかできない、私ならではのものをって。なんでも、とは言えないけど、私にできることならなんだってするわ!」
別世界からやって来た魔法使いが、自分のことを好きだと言ってくれる。それだけで十分嬉しかったが、ギィはシルヴィを喜ばせるために考えた。
この子にしかできないこと。それは魔法がらみということか。
魔法……。魔法……。
「そうだな……。じゃあ、世界で一番美しいものが欲しいな」
現実にあるものか、魔法で出すものか。作るのか。
シルヴィの思いつくものでいいと考え、ギィはそう答えた。
自分のことを考えてしてくれることなら、なんだって嬉しい。
「世界で一番、美しいもの……」
小さな魔法使いは帽子をくるくると回して、考え込んだ。
「さすがね、ギィ。これはやりがいがあるわ。私の力が試されているのね!」
「え……? いや、そんな大袈裟に考えなくても……」
「世界で一番美しいもの、それは個人差があるわ。私がこれって決められない。だから、それはギィが自分で見つけて。
私のプレゼントは『奇跡の扉』にするわ。
奇跡だから、簡単には手に入らない。でもギィなら絶対、手に入れられるはず」
ギィは己に厳しいことで有名だ。「出来たらなあ」は「必ずする」し、「やりたいんだけど」は「やってみせる」男だ。
そのために、いつでも柔軟に動けるようにと、日々の鍛練を怠らない。
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