第2話

「私はシルヴィ。ミュレルの魔法使いよ。

さっすがギィ! 私のことがわかるのね!?」


シルヴィと名のった少女は、帽子をとって笑った。


「ギィには、普通の人間にはない能力があるでしょう?

絶対、私に気づいてくれると思ってた。嬉しい!


私は旅人なの。この世界へ来て、ギィの歌を聞いて一目惚れしたの。

こんなにステキな声の、あんなに素晴らしい世界を作れる人、どこを探してもいないわ。


今日もホールの片隅でこっそり見てたの。

私、最初の衣装のラストの歌が、一番好き。


ギィの歌って、悲しいのが多いよね。切ないって言うの?

大人の恋って、あんなふうなの?


ああ、私も早くステキな恋がしたい……」


目の前で手を組んで、シルヴィはうっとりと目を閉じている。

ギィは黙って聞いていたが、ぽつりと呟いた。


「ミュレル……?」


「こことは別次元にある国よ。私はあちこちの別世界に飛んで、魔法の修業をしているの。

この世界へは、ちょくちょく来てるわ。ギィの歌を聞きにね」


シルヴィはソファの前に来て、両手を上げた。目を閉じて、小声で何か呟いている。口から流れ出る言葉は揺らめいて、ギィの上に降りかかった。


シャボン玉が弾けるような、淡い衝撃。ギィはすぐに悟った。


(身体が軽くなっている……!)


疲れがとれていたのだ。


「ギィ、お誕生日おめでとう。ギィにプレゼントをしたいの。何がいい?」


この少女は本物の魔法使いだ。これは夢か? 幻か?


ギィはソファに座り直して、シルヴィをじっと見つめた。

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