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第9話
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ギィは庭園に立っていた。
ピンクやオレンジの花が咲き、緑が生い茂っている。木々の間から、三段ほどの階段が見えた。
階段を登ったところに、小さな天使の彫像があった。
その向こうに、白いバラのアーチ。
アーチをくぐると、白と緑の空間が広がっていた。
ホワイト・ガーデンだ。様々な種類の花は、どれも白い。
道が二つに別れていて、その真ん中にはさっきと同じような彫像があった。
左の道は行き止まり。
右の道はさらに深い空間となっていた。
白いテーブルがあり、お茶とお菓子の用意がされている。そして、白い椅子には人が座っていた。
(……人形?)
長い金髪が風に揺れている。ゆったりとした服を着たその人は、目を閉じたまま、動かない。人形のようだと思ったのは、あまりにも完璧な美がそこにあったから。
美しい白い庭園の、夢のように美しい人。
(これは夢なのか……?)
いや。『扉』を開けて、別世界へ来たのだ。
ギィが近づいて行くと、気配を感じたのか、その人は目を開けた。
(ああ、思ったとおりの)
綺麗な薄紫の瞳は、宝石のようだった。
夜明けの空のような瞳はギィを真っ直ぐに見つめ、か細い声が発せられた。
「どちら様ですか?」
男性にしては高く、女性にしては低い声。声からも服装からも、性別の判断はできなかった。
年は二十歳前後か。
「旅の吟遊詩人で、ギィと申します」
片手を胸に当て、もう片方の手を大きく回しながら、片足を下げる。ミュージカルで見るような挨拶をし、ギィは微笑んだ。
「あなたの名前をお聞かせ下さい。美しい人」
不審者だと通報されてもおかしくないのだが、ギィは撮影のための衣装を着たままだったし、この夢のような庭園にはよく似合っていた。
「エミリアンです」
庭園の主はそう名のり、ギィの前へとやって来て、嬉しそうに笑った。
「吟遊詩人に会ったのは初めてです。あ、私にとっては、リシャールとエリーズとロシェル以外に、あなたが四人目なんですけど」
どういう意味だろう? 名前が色々出てきたようだが……。
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