第6話

☆☆☆




アルバムのための曲作り。ドラマのゲスト出演。ときにはバラエティー番組にも出たりする。そして数多くの雑誌のインタビューに写真撮影。

ギィは毎日を忙しく過ごし、最初のころのように三つのキーワードのことばかりを考えていられなくなっていた。


時々ふっと思い出しては、何も決め手がないために忘れていく。

奇跡の扉は開かれないまま、季節は夏の終わりに近づいていた。




☆☆☆




ギィは、今日は雑誌の撮影をしている。

連載を持っている月刊の音楽誌。毎月一つのテーマにそって、ミュージシャン活動とは関係のない衣装を着て、悩める人々へ彼なりのアドバイスをするというものだ。


なぜコスプレなのか? ギィがそういう格好が好きだからだ。


けして女性的なわけではないが、ギィは中性的で美しい。顔の造作から均整のとれたスタイルと、すべてが完璧だ。


すばらしい美声の持ち主。ピアノやギターも弾ける。そして美しい容姿。ヴィジュアルも売っているため、写真集を望む声が多い。それも、コスプレのようなものが人気があるのだ。


それは、ギィがずっと大切にしてきたものだ。

一曲のための衣装。

ライブの演出も手がける彼は、その世界観に合わせて衣装を考える。

ファンタジーふう、軍人ふう、ストリートキッズふうにもなりきるギィは、どんな衣装を着ても似合ってしまう男だった。


今日の衣装は、白地に濃いブルーの糸で刺繍が入ったチュニック。やはり白い、膝までのズボン。その下はロングブーツ。そして白いマントをはおっている。マントが翻ると、真っ青な裏地が見えた。小道具にリュート。


テーマは『吟遊詩人』だ。

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