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第5話

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好きなもの……。

ギィはベッドルームの中を見回して考える。


眠り、ベッドに横になった瞬間、音楽、アロマキャンドル、炎、本、暗闇……。



移動中の車の中で考える。

好きなものは、車、ドライブ。他に乗り物では飛行機も好きだ。

海外旅行、広い公園、美術館、城、宮殿。


空を見上げて「空」と呟く。


窓を開けて風を感じる。排気ガスの臭い。これは嫌いだ。


好きな匂いは花やフルーツ。カレーの匂いも好きだけど、これがキーワードだっらロマンがないな。


「ギィさん、寒いですか?」


車を運転しているマネージャーのサカキが、遠慮がちに尋ねる。


「ううん」と窓を閉めて、


「ねえ、サカキさん。僕の好きなものって、なんだと思う?」


他人に聞くのも、新たな発見があるかもしれない。


「そうですねえ……。

ギィさんの好きなものって言ったら、キスでしょう。ハグとか」


ギィは小さく笑った。確かに、男女関係なく、キスをするのも抱き合うのも大好きだ。

それでいくと、「キス」はキーワードに含まれているような気がする。これは直感。そしてそれは、高い確率で当たる。


「キスがしたいなあ」


「いつもしてるじゃないですか」


「あんなんじゃなくて、もっと激しい、熱烈なやつだよ」


「やめて下さいよ。週刊誌ネタにはならないで下さいよ?」


「大丈夫だよ。僕はみんなの恋人だからね」


『ステキな恋がしたいなあ』と言っていたシルヴィを思い出し、ギィは楽しそうに微笑んでいた。


三つのキーワードが揃わないと奇跡は起きない。

あの魔法使い、粋なことをしてくれるじゃないか。

なかなか難しいとは、ギィは認めなかった。

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