5

第18話

5



戻ったギィは、すぐにまた『扉』を開くつもりでいたが、マネージャーのサカキに掴まってしまった。


撮影はまだ終わっていない。カメラマンもヘアメイク係も、みんなで探していたと言われると、仕事に戻るしかなかった。


エミリアンはどうしているだろう。なぜ倒れたのか。

貧血? 確かに、異常と言ってもいいほど、肌の色は白かった。

儚い雰囲気なのもとても合っているが、身体が弱いのだとしたら、もっと気遣ってあげるべきだった……。


ギィは知らなかったのだから仕方ないが。


実際に今会いに行っても、きっとリシャールに追い払われてしまうだろう。そう考えて、翌日行くことに決めた。




☆☆☆




天気予報では、夕方から風が強くなるということだった。


ギィはよく行くアメリカンレストランで数人の友人と食事をし、その後カラオケへと誘われたのを断り、一人で帰宅した。


マンションのベランダへ出て、風の吹く中、香水をかけたバラのブローチにキスをした。


金色のバラから光があふれ、扉が開いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る