第41話

エミリアンに夢を聞いてみた。


「ギィとずっと一緒にいられること」


可愛いことを言う。が、それだけでは、バカップルになりかねない。


どこか行きたいところはないか、見たいものはないかと尋ねると、エミリアンは「あ」と声を上げた。


「雪。雪が見たいです。レネックは温暖だから、冬でも雪は降らないそうです。ギィはよく見るの?


雨以外のものが空から降ってくるなんて、不思議。雪の結晶を見たいです。みんな形が違うって、本当ですか?


本で、雪の森を見ました。とても綺麗だった。葉の上に積もった雪が重そうで、ときどきその雪が落ちて。雪の冷たさを、感じてみたい……」


デュレー家のエミリアンの部屋に、雪の結晶の切り紙が貼ってあったのを思い出し、ギィは思った。エミリアンにとって、「雪」は憧れなのだと。


雪は、ミュレルには降るだろうか。エミリアンに本物の雪を見せてやりたいという願いを込めて、ギィは歌を作りにかかった。


作曲に一日かかり、二日目に歌詞をつけた。ローランとの対決は、もうすぐだ。


ギィは二日間ずっと歌作りに没頭し、楽譜を書いては直し……を繰り返していた。


その間エミリアンは、カロリーナとポスターを作り、店内や広場に貼りに行ったりとしていた。ポスターには得意の切り紙が貼られている。色々な形の雪の結晶だ。


ギィの歌詞は知らなかったが、『雪を見せてあげる』と言われていた。

ギィはきっと魔法を見せてくれると、エミリアンは信じていた。



★★★



ピアノ対決の日。

今日はギィもエミリアンも、お休みをもらっていた。

ギィは今夜のために練習があるだろうが、エミリアンは特にすることがない。いつものように店を手伝うことを主張したのだが、イェレもカロリーナも「ゆっくりしなさい」と言ってくれたのだった。


ギィは完成するまでは秘密だと言い、物置小屋にあるピアノを使っていた。


エミリアンはカロリーナに本を借りて、部屋で読もうと階段を上がって行った。ドアを開ける前に、中で微かな音がした。

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