8
第33話
8
それは直感だった。
ギィとエミリアンは、街灯の下に立っていた。
道の両脇には家々が並んでいる。けれど、外に人の姿はなかった。
ギィは黒いマントをエミリアンの肩からかけてやり、手を取った。
二人は手をつなぎ、夜道を歩き出した。
エミリアンは心配そうにしていたリシャール、エリーズ、ロシェルのことを思い出していた。三人を振り切ってきてしまったことに、後悔の気持ちが沸き起こる。
そんな思いを察したかのように、ギィの手に力が入った。エミリアンも強く握り返す。
ギィが好きだから。ずっと一緒にいたいから。
いつも気遣ってくれた三人に、心の中でごめんなさいと言った。
やがて、店らしきところへと辿り着いた。
ちょうど、中から中年の女性が出て来た。ドアの横に置いてある看板を中に入れている。閉店なのだろう。
「すみません、マダム」
低い美声でギィが話しかけると、彼女は驚いたように目を見開いた。
「ここはミュレルという国ですか?」
ギィの美貌に見とれた彼女は、次いでエミリアンを見て、今度は口を開けた。
「まあ~、お人形のような一対だね。
そうだよ、ここはミュレル。あんた達は旅人かい?」
「ええ、まあ」
「レストランでも探してるの? うちはパン屋だから、パンしかないのよ」
店の中は空になったトレーがいくつもあり、数人の従業員が片付けをしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます