第6話

鬼頭はにこやかに車に乗って行った。


「危なかったな…」


大将が車を見送りながら呟いた。


「危ない?」


「気をつけろ。あの人は秘密だらけで掴めない人だ。噂ではあの人の回りで人が消えているそうだ。まっ、噂だがな。」


「人が消えている…。」


「どうやらお前も気に入られたようだから気をつけるに越したことはないさ。そういう俺だってお前をかっているんだ。なんならずっと家で働いて欲しいとも思ってる。奴の餌食になんてしてたまるか!」


「大将、お客様なのにそんなこと言っていいんですか?」


クスクス笑いながら大将に話すとハッと我に返り言い過ぎたと項垂れる姿が可愛かった。


50才のいい男に失礼だと思いながらも。


「ありがとうございます。気をつけます。」


「あぁ。本当に気をつけろよ」


大将にもう一度頭を下げその場を離れた。


バスに乗り15分程で下車し5分程で歩く。


あまり綺麗とは言えないアパートの階段を上がり1つのドアの前にたつ。


「おかえり。キリト」


「ただいま。今日も大将から貰った」


絶妙のタイミングでドアが開き同居人が笑顔で迎え入れた。


その様子を少し離れたところからみつめる姿に気づきながら中に入っていった。

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