第30話

かなり遠くまで来た気がする。

途中昼食をとり、再び走り出す。

アゲハは人里離れ始めると警戒していることを気づかれないように何気なく外を見ている振りをしながら回りの様子を見ていた。


しばらくすると一軒家の前に止まった。

別荘地でもない何もない場所にたっていること以外は何ら違和感はなかった。


「着いたよ。」


鬼頭は車から降りキリトに降りるようエスコートする。


「随分遠くまで来たんですね。」


「そうだね。ちなみに今日会った警察官二人、黒川と石井にはここに来ること伝えてあるよ。安全が確認できたら連絡が来るからそれまでの辛抱だ。」


そういいながら鍵を開け荷物を運び込んだ。


「手伝います。」


キリトも荷物を持ち中に入る。


何もない…。


第一印象だった。

テレビも電話もダイニングテーブルもない。


赤いラグのうえにソファーと小さなテーブルがあるだけだった。そのくせリビングらしきその空間は異様な程広かった。


その異様な広さが一層不安を掻き立てる。


「鬼頭さん。ほおずきの大将に今日休む連絡をしていないので連絡してきます。」


そういって部屋から出ようとしたキリトに鬼頭は呼び止めて笑顔を見せた。


「連絡は既にしてあるよ。後、しばらく休む事も。事情もね」


段取り済みか、ますます怪しくなってきた。アゲハは自分に忠告する。

さっき玄関口で携帯を見たが電波が届いてない。

しかも回りに人の気配もない。

しかもと至るところに監視カメラが付いていることもカラスの報告でわかった。

トンビからの伝言も受けた。

一抹の不安を抱えながらアゲハは中に入って行った。

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