奇跡

第46話

ツバメとスズメは倒れている鬼頭たちを見張っていた。


「疲れたわ…。」


スズメのぼやきをツバメは笑いながらきいていた。


「お待たせ。」


軽快に入ってきたのはカラスだ。

その後ろにボスとトンビか続けて現れた。


「遅い!」


「ツバメはいっつも手厳しいね。」


カラスが持ってきた特殊なひもで手を後ろ手に拘束していく。

その後をボスが追い頭に手をかざしていく。


「木又君、大丈夫?」


トンビが座り込んだ木又に声をかけた。


「あれ…、なにしてんの」


ボスを見ながらきく木又にトンビは隠さずに答えた。


「記憶を消しているんだ。僕の仲間のね。」


「は?なにいってんの。」


「君が見た事と同じ、僕たちの事をなかったことにしているんだ。もちろん君にも消してもらう。」


木又は訳がわからないとばかりに首を降った。


「なに言ってんだ。あんたらおかしいんじゃねー。なに人の記憶を消すとか。」


ツバメが木又を見てゆっくり歩いてくる。


「あんたの見ていることが全て、現実。認めなさい。とは言わないけど。せめて変人扱いだけは止めてよね。せっかく怪我を治してあげたんだから」


木又は息を飲んだ。そしてスズメに話しかけようと呼び止めたその時突然目の前に人が現れた。


「お帰り。って血だらけじゃん!?何があったの?どこ怪我した?」


さっきまでうごかなかったスズメがアゲハを見るなり立ち上がりかけよった。


「落ち着けよ。怪我はしてないから。」


「お前にきいてないわ!」



アゲハの代わりに答えたカゲロウだが容赦ないスズメの受け答えに笑いがこらえられず吹き出した。


「アハハ。」


血だらけで笑っているアゲハの姿は妖艶で何とも言いがたい色気をかもし出す。そこにいた誰もがアゲハを見た。

普段あまり笑わないアゲハが笑っているだけで仲間達は嬉しくなる。


「りく!」


和やかな空気を現実に戻したのは木又だった。


「忘れてた、こいつの事…。」


カラスが小さく呟いたが、多分満場一致だ。


血だらけのアゲハの足下には木又が捜していた田島陸人がいた。

アゲハは素に戻り告げる。


「唯一の生き残り。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る