第47話

ボスにアゲハは経緯を報告した。


「じゃあ、ここから800mくらい先に大量の死体の墓場があるんだな。」


「悲惨だぜ。人間とは思えない。」


「で、唯一の生き残りが彼だと。」


アゲハは無言でうなずいた。


(実和の彼氏は見つからなかったか。)


カトリは声に出さなかった。

残念な気持ちだ。

なぜか、安心している自分もいる。

その事に気づいた瞬間カトリは驚いた。

そして無理やり蓋をし仕事に戻る。


「スズメ、ツバメ、彼を田島を治療。ランクはe。カラス、応援は後どれくらい?」


「後、10分。」


「よし、トンビは墓場の位置を確認。カラス一緒に後始末を。ロウ、カゲ、2人はアゲハをつれて先に戻れ。」


「了解」


カゲロウの返事を無視してアゲハは木又に近付いた。


木又は意識ない田島を抱えて離さない。


「救急車が来るまで誰にもさわらせねー。」


その言葉にツバメが苛立っていた。


「いい加減にしなさい!お友達、助けたいんでしょ、もう、虫の息なんだから早くしないと死ぬわよ!」


「いいじゃない。ほっとけば。そいつが死んで悔やむのはこいつだからさ。」


反対にスズメは冷静に冷たく言いはなった。


そこにアゲハが近付いた。


「木又君、お願いがあるんだ。田島君と一緒に鬼頭達の悪事の証言をして欲しい。君たちにしか出来ないから。でも、そのためには田島君を死なせるわけにはいかない。だから彼を助ける為に協力して欲しい。」


血だらけのアゲハの言葉に木又は反論した。


「あんたが証言すりゃいいじゃん。何で俺たち…。」


木又は言葉を止めた。

なぜならアゲハの顔は今にも泣き出しそうな表情をしていたからだ。


「……わかったよ。その代わり絶対助けてくれるって約束しろよな。」


アゲハは優しい笑顔で微笑み返した。

でも、どこか寂しげな感じがする。


アゲハは立ち上がりスズメとツバメによろしくと言ってロウとカゲのもとに歩みよった。


そのやり取りを見ていたカトリはロウとカゲに頼んだと一言伝えると一瞬で姿を消した。


「さてと、そろそろ君の記憶、消さないとね」


その言葉を聞いた木又はゆっくりと顔をあげ真っ直ぐカトリを見た。

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