第48話

瞬間移動で戻った場所は事務所。

着いたとたんアゲハは足の力が抜けたかのように崩れ落ちた。

咄嗟にフクロウとカゲロウが両脇から支える。


「大丈夫か?」


ロウの問いかけにアゲハはゴメンと一言伝え目を閉じた。


「カゲ、バスルームに」


カゲロウはフクロウの言葉にうなずき2人でアゲハを抱えて移動する。

服を着たまま血を流した。

その間アゲハはおとなしくしていた。顔色が悪い。血の匂いが鼻に着く。

いまだに吐き気は収まらない。

それほどひどい惨状だった。


アゲハは壁にもたれながら座り込んだ。


血の匂いが薄らいできた頃、アゲハの目蓋が開き自分で動き出した。


よくあることだった。


「感情を拾っちまったな」


アゲハは誰かを疑似すると抜けるのに時間がかかる。今回はどうやら伊藤拓矢になったようだった。ただし、伊藤拓矢は多分墓場の中でバラバラ死体になっている。

とするとおそらく疑似に入ったアゲハが最後その感覚を感じてしまっている可能性が高い。

フクロウとカゲロウは手慣れたようにテキパキと色々こなしている。


アゲハの血を流し、洗い、拭き、着替えさせた。人形のように動かないが好都合だった。以前のように暴れられるよりはましだからだ。


一通り済ませ部屋に戻りソファーに座らせる。

冷蔵庫から飲み物を取り出しカゲロウは、フクロウに渡した。

無言で受け取るところがかわいくない

そう思いながらもう1本をアゲハに…


手が震えている。


カゲロウは渡すのを止めてコップに入れストローをさした。


それを差し出すとアゲハが受け取る。

横に座ったフクロウがコップを支える。

さすがの連携サポート


一気に半分ほど飲むとコップをカゲロウに渡した。

そしてフクロウの肩に頭を預け再び目蓋をゆっくり閉じた。

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