第49話

カトリは木又にゆっくり近づきしゃがみこむ。


「田島君が見つかったのは奇跡だね。もう死んでいてもおかしくない。現に生き残りは彼だけだ。」


木又は無言で聞いていた。


「君の記憶消すよ」


木又はスズメとツバメに治療してもらっている姿を見ながら口を開いた。


「あの人、田島を助けてくれた人、泣きそうな顔をしてた…。」


「そうだね。」


「記憶、消さなきゃダメなのか?俺、あの人に御礼言ってない」


「伝えておく。忘れた方がいい。君たちのために。」


カトリはそう言うと木又の額に手を当てた。


遠くからサイレンの音が近付いて来る。


スズメとツバメは治療を止め立ち上がった。

完全な治療はしていない。

むしろ外傷はそのまま残し致命傷のみ手当てした。

唯一の生き残り、この地獄の惨状を証言してもらわないと、自分たちの努力が水の泡だ。


カトリはその場を後に駆けつけた応援を出迎えた。


トンビはその補佐に回りカラスがロウにお願いしてスズメと自分を事務所に飛ばしてもらった。事務所に付くや否やカラスは監視カメラに入り込みチームの姿をカトリとトンビ以外消す。

残されたツバメはカゲロウの隠したバイクで帰った。

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