第45話

「見つけるためにここまで来たんだ。」


「ホントに?あいつは生きてるのか?」


「わからない。」


木又は無言のままうつむき地べたに座り込んだ。


「ツバメ、彼を頼むよ」


アゲハはそう言うと奥の小さな扉の取手を持って振り向いた。


「ロウ、カゲ、着いてきて。」


2人はお互い顔を見合せ不思議そうな表情を見せた。


「どこに?」


「被害者たちのところ」


「は?…」


そのまま中に入ったアゲハの後を追うように着いていく。


小さな扉の中は狭い通路だったがすぐに広くなった。


「ここってさ、外にあった井戸?」


しかもまだ狭い通路が向かい側にあった。

アゲハは戸惑うこと無く進んでいく。

少し上り坂になっているのか歩きにくい。


すると又開けた場所にたどり着く。


「表に出た。繋がっていたのか。」


フクロウが呟き天を仰いだ。


暗闇の中、アゲハは数歩進み止まった。


カゲロウが無言で着いていくと目の前には大きなクレーターが広がっていた。

カゲロウとフクロウは言葉を失った。

悲惨な光景。

かつて無いほどの嫌悪感と吐き気、悪臭。

地獄だった。


目の前の光景が信じられずに立ち尽くす。


何体ものバラバラ死体、白骨化したものもある。胸を切り開いたままでからだの中から虫が涌き出ていた。


「ウッ、オェッ…。」


我慢できずカゲロウが吐いた。


アゲハはクレーターのなかへと滑り降りた。


「アゲハ?何してる?」


フクロウが止めるのも聞かず死体の山を歩き出す。1度見渡して一点に向かって歩き出した。


「アゲハ!オイ!」


ある場所で止まりしゃがみこんだと思ったら足下の原形をとどめない被害者の破片を退け始めた。


「生きてる!」


「は?」


「生きてる!」


アゲハの言葉に一瞬思考が止まる。だがすぐにカゲロウは理解し叫んだ。


「アゲハ!退け!」


そう言うとアゲハの回りの死体を念力で持ち上げた。


アゲハが1人の男の手を掴んだ瞬間フクロウが瞬間移動で穴から目の前に移動させた。


カゲロウは力を抜き遺体を穴に戻した。そして男が生きているのを確認すると、瞬間移動で仲間の元に飛んだ。

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