第13話
「君、どうしたの?こんなところで…」
声の主を見るとキリトは驚きのあまり目を見開いた。
「あっ、鬼頭…さん?」
「あれ?キリト君?」
「どうしてここに…。」
「こっちの台詞だよ。どうしたのこんなところで…しかも一人?」
「あー、ちょっと色々あって…。」
「何?困ったこと?僕で力になれるなら話を聞くよ。」
キリトの肩に手を置き横に座った。
そしてキリトの手を握り覗き込むように顔を見る。
キリトはゆっくりと目を伏せたがため息を付きながらも顔を上げた。
「…いえ、ありがとうございます。やっぱり自分で解決しないと。」
すると鬼頭は素早く手をはなし笑顔で答えた。
「偉いね。どんな困難にも立ち向かおうとするその姿勢は素晴らしいよ。僕にもその勇気があったらどんなに嬉しいか。」
「素晴らしくなんか無いです。自分の不甲斐なさにいつも打ちのめされて…。友達からもあきれられる程です。両親が死んでから初めて気づいたんです。一人じゃ何も出来ないと…。今も友達の家に転がり込んで…。でも、今日出ていくように言われました。情けないですよね。金も家もないのにまだ学歴にしがみつこうとしてる…」
苦笑いするキリトに鬼頭が真剣な面持ちではなしはじめた。
「人間は皆もがいて足掻いて這い上がろとする。何も恥ずかしいことじゃない。キリト君だってご両親が生きてたら普通の学生をやってただろう。でも、君は今一人になった。それでも何とか生きようって頑張っているじゃないか。諦めることは簡単だが頑張ることは誰にでも出来ることじゃない。もっと自信を持っていいよ。」
キリトはじっと聞いていた。そして呟くように声を漏らした。
「鬼頭さんは強いですね…」
「ありがとうございます。話を聞いて貰って少し楽になりました。帰ります。引っ越し先を見つけないと…。」
そう言って立ち上がったキリトに鬼頭は座ったまま見つめてた。
「少しでも役に立ててよかったよ。……よかったらうちに来るかい?」
「えっ?」
「次の部屋が決まるまでの間。部屋も空いてるし…。」
「いやッ、そんなことまで甘えられません。お気持ちだけ頂きます。」
すると立ち上がった鬼頭はにっこり笑いキリトの頭を撫でた。
「まっ、すぐとはいわず考えておいてよ。いつでも頼ってくれ。これも何かの縁だろうし。」
その言葉にキリトがクスッと笑った。
「なに?」
「結構古風なことをいうんですね?」
その言葉に鬼頭は恥ずかしげに苦笑いした。
キリトはそんな鬼頭にお辞儀をし帰って行った。
キリトの背中をじっとみつめる鬼頭。
その顔は暗闇の中、妖しげににやついていた。
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