予感

第27話

カトリは待ち合わせのカフェに着いた。

石津実和からの連絡が来たからだ。


中に入ると奥の場所に座る実和を見つける。


静かに近づき声をかけた。


「お待たせ。」


「すいません。来ていただいて…。」


向かい側に座ると店員が注文を取りに来た。

コーヒーを頼みケーキも頼む。

実和が目を丸くしながら見ていたがお構い無しだ。


「それで、伝えたいことって?」


実和は気を取り直しカバンから一冊の手帳を出した。


「これです。」


差し出された手帳をカトリは迷うこと無く手に取った。

パラパラと中身を見ていたが、ある場所で手が止まった。


「これって…」


「拓也のです。アパートの荷物を引き取ったんですけどその中に入ってて。何かの手がかりになるかもって思って。」


カトリは手帳の最後のページを見た。

震えながら書いたのか、もしくは急いで書いたからなのかあまりにも形をなさない文字が書かれていた。


「これ、預かってもいいかな?」


「はい。…あの、カトリさん。この前、アゲハさんにお会いしました。拓也の事を聞かれて、あれから何か分かったんでしょうか?」


「今はまだ…分かったらお教えしますよ。」


「拓也、お腹の子をとても喜んでくれて、会わせてあげたい…。アゲハさんからは生きているとは限らないって言われましたが生きているって信じたい。どうかよろしくお願いします。」


カトリは無言でほほえんだが返事を避けた。

正直、生きている確率は低い。

だが、お腹の子に影響しないようにあえて否定しなかった。

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