第26話

あの後鬼頭は助手席にキリトを乗せ急ぎ車を走らせた。

着いた場所は総合病院。


「鬼頭さん、俺は今持ち合わせがないですけど。」


すると鬼頭はクスクス笑いながらキリトを見た。


「大丈夫、僕が巻き込んだんだ。それくらい持つから。それにここに僕の知り合いが居るから情報も漏れないだろうしね。」


話し終わる頃には駐車場に車を入れ終わっていた。


「行こう。手をかそうか?」


「いえ、大丈夫です。」


病院に入るとすぐにエレベーターに乗って3階に着いた。少し進んだ先の部屋に入るとそこに白衣を着た男の人が座っていた。

鬼頭を見るなり目線はキリトに移る。


「悪いけど、この子見てくれ。」


「どうした。」


「襲われたんだ。」


「襲われた?」


「不法侵入、おそらく例の件…。」


「…。」


二人は意味深な言葉を重ね話をしていた。

話し終わるとキリトにベッドに寝仰向けになるように指示した。

そして迷うこと無く服をまくり挙げた。

キリトは一瞬びくつき静かに白衣の男を見る。


「どう?奥野?」


奥野と呼ばれた白衣の男がキリトに触診する。


「かなり痛めてるね。でも骨や内蔵には問題なさそうだ。しばらくは安静にして、それと熱が出るから冷やすように。」


「ハイ」


奥野は椅子に座ると鬼頭に事情を聞いていた。

時折キリトを見ては視線を戻す。


"カラス…奥野、調べといて"


"了解"


触診された時突然流れ込む映像に焦りを隠すので必死だった。映し出されたのは…覗き込む奥野と薄暗い部屋と冷たい空気。胃液が上がってくるかのような気持ち悪さに襲われた。


診察が終わりなにもせず病院を出る。車に乗ってかなりの距離を移動した。どこへ連れていかれるか分からないまま。


その後ろをバイクで着けられていることを知るものはいない。

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