第18話

「どういう事?」


鬼頭は起こるでもなく優しく問いかけた。


「俺なんかに色々して貰って、俺の事何も知らないはずなのに…。こんな…。親切にして貰って…。もしかしたらなんか勝手に持ち出して逃げるかも!」


「逃げるの?」


「あ…、いえ、だけど信用してもいいのかなって。嬉しいけど、怖くて…ハハなにいってるんだろ…。」


鬼頭はただ微笑みながら黙って聞いていた。


キリトが話し終わり暫く沈黙が続いた後、鬼頭はリビングのソファーに座らせ、鬼頭も横並びに座った。そしてキリトの手を握り話し始めた。


「先ず、"俺なんか"っていうのは止めよう。君は自分を下に見すぎだ。それに僕は君の事信用していいと思ってる。だってキリト君に一度うちに来るかと聞いたとき断わったろ?

何か裏が有るならその時に来てたはずだ。

それに僕は弁護士だ、これでも人を見る目は持っているつもり。」


「でも、俺は鬼頭さんと会ってまだ日も浅いし鬼頭さんの事を何も知らない。それに……もし、同情されてるなら…。」


真剣な面持ちで話すキリトに鬼頭は冷静に対応する。


「同情、そうかもしれない。僕はね、母親が早くに亡くなって、父に育てられたんだ。けど父は母がなくなったことで変わってしまったんだ、酒に暴力、ギャンブル。僕は早く奴から離れたくて必死に勉強して今があるんだ。だから、同じように頑張っている人がいるとほっとけない。助けたいって思うようになった。弁護士を選んだ理由でもあるんだ。だから、君は君のために僕を利用すればいい。たとえ騙されたとしてもね。」


鬼頭の話をキリトは真剣に聞いた。

申し訳ない気持ちで一杯になった。


「鬼頭さん、すいません…。こんなに親切にしてくれてるのに水を差すようなことを…。」


鬼頭はその言葉に微笑みを見せながら頭をポンポンと2回手を置いた。


「さっ。今日は疲れたろ?風呂に入って、寝なさい。ほらっ。」


「ありがとうございます。」


キリトは深々とお辞儀をしてバスルームに向かった。


キリトがバスルームに入ったのを確認すると鬼頭は自分の部屋に入った。

そしてウォークインを空け、かかっている服を左右に掻き分けた。その先を密かにじっと見つめた。

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