第37話

アゲハは鬼頭と向かい合わせで食事をしながらみんなの話を聞いていた。


(堺源次郎の秘書、橘なら会ったことがある。いつも堺の後ろに着いてた。ならおれの事を知っていても不思議じゃないか。)


「キリト?大丈夫か?」


鬼頭の問いかけに意識が戻る。


「あっ、はい。大丈夫です。」


「なんかぼーっとしてたね。疲れたのか?」


「すいません。ぼーっとしてました。疲れた見たいです。」


答えつつクスッと笑うと鬼頭は力を抜いて微笑み返した。


「悪かったね。ほんと、巻き込むつもりじゃなかったよ。」


「いえ。大丈夫です。むしろ助けてもらったのは僕の方なので。」


会話しながらスズメの話を聞いていた。


玄関に来訪者を知らせるチャイムが鳴った。


「誰だろ?僕が出るから待ってて。」


そういって鬼頭は玄関に向かう。


しばらくして警察と名乗った黒川と石井が入ってきた。


「キリト君、だったよね。怪我の方はどう。」


「大丈夫です。」


黒川のいきなりの質問に冷静に答える。

すると石井がキリトの前に座った。


「君のお陰でこの間の二人組の事がわかったよ。ありがとう。ただし、まだ行方を追っているところなんだ。もう少しだけ我慢してくれないかな。」


「そうですか。判りました」


そう答えて立ち上がった。


「どうした?」


「トイレです。」


「そっ。」


何気ない会話だがキリトはしっくり来ない。


{アゲハ、}


カゲロウからの呼び掛けにトイレに入ってすぐに反応した。


{近く?}


{あぁ。スズメの話し続きが………}


{カゲ?}


突然途絶えたカゲの声に少し焦った。


{カラス?聞こえる?}


(なんだ。途切れた。)


今までカラスのテレパシーが途切れることはなかったはじめての事に内心焦っていた。


嫌な予感がする気持ちに蓋をし鬼頭のもとへ戻った。

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