第54話

カゲロウはいつも気にしていた。

ボスは処理が終わると必ずアゲハをそこに連れていく。

アゲハは寂しげな顔を隠しながら黙っている。

その姿が居たたまれない。


食事を終えるとボスが会計し店を出た。


「あの!良かったらこれ。」


大将が袋を持って追いかけてきた。

なぜかその袋をアゲハに渡す。


アゲハは驚いた。自分のことを覚えていないはずなのに。今日は一言もしゃべっていないのに。なぜか袋を自分に渡してくる。


「ナゼ?僕に…。」


「申し訳ない。はじめて会ったのに、なんだか懐かしい気がして。」


その言葉にアゲハは驚きを隠せなかった。

袋を受け取り笑顔で御礼を言うと頭を下げた。


ボスも驚いていたが見守っていた。


「君の名前、聞いてもいいかい?」


大将の優しい声にグッと来る感情を押さえつつ答える。


「アゲハ。」






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