第39話 真剣に向き合って損しちゃう系

「はぇ?」

「えっ」


まったく予想してなかったであろうオレの発言に二人があんぐりと口を開いて女の子が漏らしちゃイケない間抜けた声が漏れていた。

張り詰めていた糸のようなこわばる表情筋も次第に緊張が抜けて見たことない顔も相まってちょっとおもろいな。

っと補足しておかなとな、このままじゃ理解が及ばなすぎて二人の頭まで蕩けてしまう。


「アレーナとのデート中、たまたまイベントに遭遇したんだ」

「たまたまフェリナ代役と筋肉にもやし野郎のパーティーで魔物討伐に来ていたらしい」

「え、ええ………アウロ―にミウね。それで、どうなったのかしら?」

「ベヒモスの討伐に来たらしかったが——————それはミウの手柄ってことになった。そこで前から一人接触しようとしてたからちょうどいいチャンスだって思って行動に移したところ、アレーナが追いかけてきてピッタリのタイミングでそいつらと出くわしたんだ」


「前回、ギルドで街の人たちに無視されてたの覚えているか?」

「またアブナイ真似しようとしたのかしら………ええ、覚えてるわ。あれは完全に認識されていない様子だったけれど」

「あの時同様、完全に無視されたんだ」

「あ——————」


オレの説明に何か得心がいったらしく、現場に居合わせていたアレーナから声を上がる。


「僕にもフェリナの代役………? の姿が見えたよ。前回は靄かかってたはずが今回はハッキリ認識できたの」

「突然の襲撃とわたしたちが認識できないのは偶発的な現象だった。と言いたいのね」

「ああ。その通りだ」


なるほどと得心めいたようにフェリナが呟く。

狙われていたらしきオレだけでなく、相手にしていたアレーナもまた無視されたんだ。

アレーナがついてきてくれなかったら証明できなかった。

それどころか鬼神暗鬼となって証明にこだわり続けてた可能性が高い。


荒唐無稽な話にもほどがあるんじゃ………? なんて思うかもしれないけどバグなんて所詮そんなもんだろう。

綺麗に仕上げたはずのイラストが出力されず、歪なゲテモノ展示会かのように出力されるのはもはや定番のネタになりつつあるくらいだ。


バグ前提で考えれば二人の攻撃が通じなかったのも合点がいく。

何故こちらを待っていたように突っ立っていたのか、最後にどうしてオレに暖かい眼差しが向けられたのかは未だ疑問は残るが………バグって魔法の言葉の前では意をなさないんだ。

人知で図れるような現象ではない。


「あり得ない事象が起こりえるというのがバグなのね」

「ああ」

「だから僕のおかげって言ってくれたんだ………」


『リオの役に立っちゃった、嬉しい。肩の荷が降りた安らかな表情をさせたのは僕にしかできなかったってことだよね。つまり、あの笑顔を独り占めしたのは僕で僕だけに向けられた宝物………ふふぃっ、うひひひひ』


「っ!?」


ゾクッとした感覚とアレーナが思考を飛ばしてきた。

全身がむずむずして鳥肌立っていくのが嫌と言うほどわかる。


「お待たせしましたー!! こちらご注文のフィロージュ三つですね? ではごゆっくりどうぞーー!!」


ちょうどいいタイミングに料理が運ばれてきた。

二度目の異世界での外食、しかもフェリナの保証付きのモノだ。

では——————。


「「「いただきます!!」」」

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