第4話 異世界の真実
「さて、今日はどんなイベントが待ってるかなー」
次の日の朝。
はやる気持ちが抑えきれず、寝不足の身体を起こして街へ向かう最中。期待がそのまま言葉になってこぼれてしまった。
なんなら鼻歌まで歌っている。
「到着―って魔法使えたら徒歩で移動しなくてよかったのになぁ」
異世界転生(オレの場合は転移かな?)系のものではトンでもチートもらってスタートすることが多い。
成り上がりにしろ主人公最強系にしろ、自覚する時期に差があるだけで皆チート持ちで始まる。
しかしオレの場合、そんなものどころか詠唱付きの魔法すらも使えない有り様だった。
昨夜、暇すぎてゲームで書かれていた魔法を思い出せる限り試してみたけどどれも不発だった。悲しくて泣きそう。
「家っていいのかあれは………ステータス窓すら出せないのにどうして寝床だけ備わってんだろう」
こっちに呼び出したやつの最低限の気遣い………か?
ひ弱そうな外見に比べてしっかり風もしのげてたし、外よりずっと快適だったからたぶん配慮だろうけど………。
「配慮するくらいだったらハーレム系に飛ばしてほしいー」
本音がぼろっと外に出てしまって慌てて口をふさぐ。
「………?」
周りに聞こえちゃわないか羞恥で咄嗟に取った行動によって異変に気がついてしまう。
「変な目で見てくる人が………ない」
今度はあえて声に乗せて疑問を口にしてみた。
他の人に聞こえるよう今度はなるべく大きめの声で。
が、相変わらずこちらに視線を寄越す人はない。
というよりメインストリートのはずなのに人が少なさすぎる。
人の往来も談笑に励むモブキャラも何もない。
今のオレの住処同様がらんどうになっている。
メインストリートから噴水を横切って昨日の屋台がある脇道に差しかかる。
「おっちゃん」
「………」
話しかけてみたところ、昨日のようなはきはきとした返事は返ってこない。
「サンドイッチ寄越せやバカやろう」
我ながらひと昔前のヤンキーになり切れてないソフラノボイスで脅しかけてみても、頬をつねってみてもなんの反応も返ってこない。
まるで魂が抜かれたみたいにただそこに立ち尽くしているだけだ。
そこでふとある可能性が脳裏に浮上した。
「もしかするとイベントが振り分けられてないから?」
疑問を口にした直後、とある場所が脳裏に浮かんだ。
そこにたどり着ければこの仮説も立証されるのではないか?
諦めかけていたハーレムもこれで手に入るのでは………?
口に出した可能性を確認するために踵を返してある場所に向かうことにした。
「本当についちゃった」
街の探索を急遽止めてやってきたのはシニアの中心と言える場所。
王の娘であるフェリナの寝床であり、一番背景CGが凝ってると噂のあの場所である。
「王城ってこんなあっさり入れるものだったっけ」
そう。ただいまオレは王城へやってきた。
「先鋭された百の門番もイレギュラーの前では形無しか」
フェリナの家であるここはとにかくきつ過ぎる警備が特徴だ。
どれくらいかって言うとイラストというより映画のCGさながらの凝った背景よりルートによって登場する百の精鋭騎士で構成された門番がネットで語られるくらいだ。
この設定のおかげで別のルートでは物語が展開されたりもするが………。
「推測通り、か」
昨日の婚約破棄イベントの後ではすぐオープニングが流れる仕組みになっている。
この【イベントがない限り登場人物は動かない】説を証明するためにわざわざ警備がきついと噂されているここにやってきたわけだ。
おかげで仮説は立証された。
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