第26話 運命論はヤンデレ臭あるよな

アレーナの別荘から逃げ出したシニアは昨日と同じ何もないゴーストタウンと化していた。


「久々に屋台のサンドイッチ食ってみたかったんだがなあ」


初日以来、今まで一度も食べられてない。

だからやけに食べたいんだろう。


「フェリナとデートの時は屋台に行くって発想自体なかったし」


目の前でデートを全力に楽しむ彼女に目が奪われたのもあるが、当時は場しのぎ以外何も考えてなかった。

もっと楽しむ前提でやってたら屋台に誘ってたんだけどなー。


「ってまたエナドリか………」


ここのところやたら遭遇率が高い気がする。

何度か重なった偶然は必然みたいなことわざがあったような………。


「なんだっけ………一度は偶然、三度はサンドイッチ三段重ねか? ぷっくくっ………」


やべ、今のダジャレめっちゃうまくね?

三度とサンドイッチを掛けた絶妙な外かり中とろの如く言語のチョイス。

今のオレだったら某動画サイトの有名人になってもおかしくないぞ!!!


「んなわけねーだろうが。っはー腹千切れるかと思った」


己のおっさんギャグにバカウケして死ぬほどゲラゲラと笑ってしまった。

そんな愚行の極みみたいな真似をしたところを責める人はおろか聞き耳立てる人すらいない。

目の前でお馴染みのメイドが身に纏う黒髪ショートの少女も聞いてない。

今だけはゴーストタウン化しててよかったと心の底から思う。


「や、思考は盗聴されてる………か?」


位置情報はとっくに漏れてる。

その位置情報の展開の仕方は教えてもらえなかったのでオレは使えないが………ようは離れているだろうし、今のギャグ、聞いてないよな?


「盗聴されてないことを祈るしかない………」


じゃないとオレが死ぬ。

転生後の死因が“おっさんギャグを盗聴されたことによる恥死”はさすがにないな、うん。


「一度は偶然、二度は必然。だったな」


ほとんどの人はここまでしか知らないが、続きも当然存在してる。


「三度目は必然、四度目は運命………か」


なかなかロマンチックじゃないかって当時は感銘を受けた覚えがある。

しかしながらこれ、考え方によってはヤンデレが好きそうな言葉じゃないか?

偶然が重なるから必然となり、最終的には運命に繋がる。

とても素敵な言葉だって今も思うけど、オレの思考が汚されたのかどうかは知らんけどそこはかとなくヤンデレ臭が感じられる。


「まさかなぁ………」


横目で固まっているままのメイド姿のエナドリを見やる。

相変わらず絵に描いたような綺麗な佇まいが何故か不気味に感じられる。


「二人の自我が芽生えたのも偶然、深く考えずヤリチンしにいくか」


後ろ髪を引かれる思いは振り払えず、クズ発言で気を紛らわせながら王城へ向かうことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る