第43話 二人のために
「ひでぇ目に合った………」
久々に一人でシニアの街を歩きながら思い出すのは昨日のこと。
戻って来たシニアは相変わらずの閑散としたものだったのでどこかに寄ることなくそのままフェリナの別荘に連れ去られた。
それからまあ………とても口には言い表せない長い長い夜が始まったわけだ。
「さすがにやりすぎだろ。こっちには限界があるってのに」
罰が前提の行為だったんだしこっちに遠慮するなんてハナから期待してなかったけど………代わる代わるでの連続はキツイ。
しっかしなあ。
「心が読めるからって相手の思考にどやかく言うのは果たしてライン越えか否かがわかんない」
屁理屈だって自覚があるだろうから行為が終わった後、即謝ってきたんだし一人で出かけてくるのも許してくれたわけだろうけど。
肝心の『許されるライン』がわかんない。
「まあ、冗談つっても浮気を仄めかすようなことだったから強くは出れないか」
同じ立場だったら間違いなくキレてた。
正しいか正しくないかはわからんがお仕置きされた動機というか心情は分からない話でもないなあ。
「ここまで激しくしても平気なのに最初の頃はどうしてあんなに疲れてたんだろ?」
初めてヤった頃、体内の何かが持っていかれるような、搾り取られるような感覚があった。
「あの時はここまで連番でやってなかったのになんでだろう」
抱いたのは動かない最初の一回のみ。
満足と疲れが綯い交ぜになって続けるどころじゃなかったけど、不思議と今は何回やっても平気だったりする。
「やっぱりあれか?」
クソ童貞だったからか?
「レベル1のクソザコじゃモブやっつけるだけで充分時間かかるからなあ」
経験値が積まれて強くなるとステータスが上がるのは別段ゲームに限った話でもない。
勉強も運動も最初は四苦八苦だったのにコツがわかったり成長だったりして難しい問題も難なく解けたり一生出来ないと思った運動にいつの間にか手がつけてるなんてざらにあることだ。
「それなら納得できるぜ」
むしろそれしか思い当たらない。
魔法が使えたなら隠し魔法か魔法の副次能力か色々悩むところはずだが、あいにくオレは魔法なんかまったく使えないポンコツだ。
チートどころか基礎魔法すら使えないからな~。
「とっくに結論が出たもので悩むのもバカらしいけどな」
けれどこれこそ平和な証なのだろう。
「っと着いた」
シニアは相変わらずがらんどうのゴーストタウンのままだ。
一人でふらっと出かけたところで楽しめるモノなんかちらほら見える動かないNPCと化した人たちにいたずらするくらい。
動かない人にいたずらしたりするのは正真正銘のクズだからさすがにやらないけど。
「もう立派なクズだったそういえば」
バカらしくなりすぎたあまり自虐ツッコミに走る。
ともかくそんな現状で出かけて来た理由は外ならぬ先日のあの出来事のせいだったりする。
「普通に気になるんだよな………フェリナとエナドリのお手製のフィロージュ」
オレは今、転生したての頃からしばらく世話になった小屋に来ている。
フェリナの別荘に備わってない香辛料のいくつかが前回の保存食の買い出しの時に買ったのを思い出して戻って来た。
命の恩人でもあり相棒に何も言わないまま留守にし続けるのも気が咎められたのも一役買ってるけものの………一番の理由はやはり二人の息抜きだ。
代役だのイベントだので散々世話になってるんだ、
これくらいはしてやらないと男の恥ってもんだろう。
「ただいまー」
久々に我が小屋へと帰ってきた。
『カノ檻』の世界で初めて目覚めた時、真っ先に目についた木造の室内。
懐かしい感覚が身体に染み込んでいく。
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