第57話 カノジョの愛の檻に閉じ込められたら
「こうなるわなぁ」
「お望み通りメス豚エンディングですよ、よかったですね。ご主人様!」
「それはどういう意味かしら駄メイド?」
「まぁまぁ」
噴水広場から少し離れた先でオレたちはこのゲームのフィナーレを飾る最大イベント。フェリナとアレーナの結婚式エンディングを見ていた。
ハチ公の暴走による襲撃があったのも既に数日前の過去になろうとしている。
「この瞬間が直接拝める日がこようとは………………!」
代役たちの披露するものでも偽物などではなくれっきとした現実。
カノ檻最大のイベントをまさかその主人公と攻略キャラとサブキャラと見れるなんて——————。
口ではそんな直情的なこと言いながら頭の片隅には数日前の情景が浮かぶ。
ハチ公に謎の魔力を食らい意識ごと飛んでいたその間、予想通りタイミングよく駆けつけたフェリナとアレーナの活躍に騒ぎは終息を迎えることになった。
ぶっちゃけ殺したらしい。
目を覚ましたら今度こそフェリナの別荘のベットに軟禁されていた。
が、これにはきちんと理由があるらしくやむを得ぬこと。
ハチ公が流し込んだ毒魔法はどうやら洗脳魔法の一種らしい。
じゃあそれだけ取り除いたらいいのでは………? という疑問にエナドリが覚悟が決まった眼差しで顔を横に振って否定してたのが未だ瞼に焼き付いている。
『魔法の除去の際、強い性的衝動が出てこれに従ってしまった場合、生涯魔法をかけた術者に隷属される仕組みの魔法です。なんていやらしい毒魔法なんでしょう』
とどのつまりオレが拘束された理由はハチ公にキスされたからでもパーティーのメンバーにこっそりとハチ公と旅行したからでも、こいつとのことを何一つ説明しなかったからでもない。
どこまでもオレの身を案じての仕方ない決断だったらしい。
それから数日間はマジで地獄だった。
暴れ馬みたいに身体中にみなぎる性欲を解消することも出来ず、何故か走り出した快感に従えない。
寸止めばっか繰り返されてメス堕ちするヒロインの気持ちなんか男のオレが知りたくもなかったが………まあ、うん。
初めて共感することができた、くっ。
淫魔との死闘みたいな日々は主にエナドリの治癒魔法による尽力と時折諫めるため励んでくれるフェリナとアレーナのおかげでなんとか完治。
ようやく出かけられるほどの身体になったので三人で一緒に出掛けたらちょうどフィナーレに立ち会えたというわけだ。
「エンディングはこれで終わりかしら?」
「フェリナの代役がアレーナの代役にお姫様抱っこされてシニアのメインストリートに向かってるから多分これで終わりかな」
これでカノ檻というゲームは幕を閉じるだろう。
代役の二人が今後どうなるか気になるとこではあるが………まあ、それはそれ。
今はそれよりハチ公との一戦が気になる。
「なあフェリナ、ハチ公についてなんだが——————」」
「——————そういえば」
ピッタリのタイミングにアレーナに遮られる。
「あのクソ女倒したら使えるスキルが増えたんだよね」
「へ?」
なんだなんだ?
ファンタジー系あるあるの『倒したらなんかスキル増えた』ってやつか?
「どういうスキルなんだ?」
興奮しすぎて聞くはずだったやつじゃなくて新情報に食いついてしまった、くそっ。
「それがね。パーティーメンバーの過半数以上が今強く想ってることが叶う魔法らしいんだぁ」
「チートすぎるじゃん」
パーティーという概念に並みならぬ信念がある魔物の王様を倒したからなのか?
はたまた裏設定との対戦で獲得したのか?
今、話題逸らそうとしたよな?
など、色々疑問は沸き上がるけど真っ先に口についたのは直情的感想だった。
「じゃあ教えてあげるよ? 行くよっ」
「「「ワーブ」」」
「なんで!?」
三人一斉に詠唱を唱えた直後、何故かフェリナの別荘のベットに横にされていた。
この世界にやって来た直後の格好のまま、手首と足首に鎖付きで。
「さあて………ご主人様の見たかったものも見せたことですし♪」
「え、エナドリ………?」
「これで僕らのターンだよ。今度こそ逃がさないから…………♡」
「アレーナ………?」
「魔物とはいえ他の女とキスして魔力注ぎ込まれた………しかもその前にパーティーなんかも組んでいたなんて」
「「「これは立派な浮気」」」
「ひぅっ………」
三者三葉の仄暗くもどこか熱の帯びた視線が一か所に集中する。
やっぱり心に留めていたんだ。
オレの体調が優先で一時的に触れなかっただけで水に流すつもりなんかなかったんだ。
じゃらりと響く無機質な鎖の音が逃げられない現実だと突き付けてくる。
「お、オレにはその………代役たちがこの先どうなるか見届ける義務があって………」
がしっ。
「あっ……♡」
「逃がしませんよ」
「リオの知っているカノ檻は幕を閉じたんだよ? 前を見ようね、リオ♡」
「この先もずっと、それこそ何があっても逃がさないわ。愛しているわリオ♡」
こちらへ伸びる三つの手に、そんなことを思う。
オレに宿る“想像再生”スキルとそれをフェリナに使った瞬間からこの未来は予言されていたのではないのかと。
カノジョたちを閉じ込めたのではなく逆に閉じ込められたのはオレの方だったと。
「「「いただきます♡」」」
気づいた時には時すでに遅し。
熱く燃え盛る想いをぶつけるように。
この先、二度と話さないと直接伝えるように。
妖艶さ湛える一言が皮切りとなってオレたちだけの狂乱のアフターストーリの幕が上がった。
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これにて悪役令嬢ゲームに転生してヤリ〇ン目指してたらヤンデレに囲まれたは完結となります。
最後まで見守っていただきありがとうございました!!
次はもっと楽しめる良質を心掛けますのでどうぞよろしくお願いします。
悪役令嬢ゲームに転生してヤリ〇ン目指してたらヤンデレに囲まれた みねし @shimine0603
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