第24話 逃げられなくなったのでは………?

「あ、おはよう。フェリナ、アレーナ」

「ええ、おはよう。リオ」

「おはよう。リオ」


目を覚ました二人にまず挨拶を交わすととても嬉しそうな笑顔の返事が返ってきた。


「無事回復したみたいでよかった………」


二人の顔を見るや否やそんな安堵の言葉が無意識に口についてしまう。

裏設定の照らし合わせを兼ねたシニアの捜索に出てからはよ二日がくらい。

代役が消えた後、倒れていた二人が最後の力を振り絞ったかのような気迫で起き上がったけどすでに事は収束していて後の祭り状態。


画面の向こう側では見ることのなかった熾烈な戦闘だったんだ。

フェリナとアレーナの疲れが取れるようひとまず近くにあったらしきアレーナの別荘に移動。ついたすぐ二人はロックダウンし、今に至る。


「寝起きたらリオの顔がそこにいる生活………最高だわぁ」

「本当にね………んっー! 寝てる間、いたずらしてないよね?」

「してると言ったら、どうする?」


本当はしてないけどここは敢えて挑発する感じで行ってみる。

どうせオレが何もやってない前提で聞いてきているに決まっている。

ほんの出来心半分、守ってもらった相手にいつまでもたついた態度取るのは後ろめたいという気持ち半分でそう返した。


「あら、本当かしら? わたしの身体、満足してもらえたかしら………」


『何もやられてる感覚がしないけど………まさかハッタリとかじゃないわよね。うん、きっと素敵なひと時に違いないわ。ええそうよ、嘘つくわけないもの。今度はもっと満足してもらえるよう夜な夜なトレーニングを………』


寝起きの頭じゃ心を覗く選択まで行きつけてないらしいけど、なんで思考が勝手に流れてくるんだよ。

何故かめっちゃ顔赤くしてるけどまんざらどころか満足かどうか心配してるし………。


「もお………恥ずかしいから次からはちゃんと言ってからしてね?」


『勝手に使ってもらえた、つまりはもう『リオ専用の女』ってタイトルがキャーキャー!! 自分色に染めてくれる決意がついに出来たんだね? すごく嬉しいよ、リオ! もう僕も遠慮する必要なんかないよねそうだよね? まずは僕が最近選んだ“僕の選んだリオが着たら似合いそうな服百着”を着せ替えて………』


こっちは照れるどころかいつの間にかオレの将来の姿まで決めてやがる。

雲行きが怪しい。

このままズルズル流れに身を任せてしまってはヤリチンなんて夢見た瞬間犯される未来しか見えない。


「ハッタリでした手なんか出してませんすいませんでした!!!!!!」


そこで必殺技、『全力土下座』を発動。


「………」

「へぇ………」


オレの狙いはラブコメではもう飽きたと言っていい照れ隠しの『最っ低』とか『クズ』とかのテンプレだった。

それで上手く雰囲気かはたまた主導権がこっちに戻ってくると思った結果がご覧の有り様である。

しかしそれは元々主導権がこちらにある上で成り立つものだと今更ながら気づかされる。

何故だか知らないがオレを想ってくれるこのパーティーの主導権はハナからオレにはなかったみたいだ。


「リオにそんな暴言、吐けるわけないでしょ? アナタの好みに合わせていきたいもの。ただ、餌をやるふりで終わるのはちょっとお仕置きが必要かしら?」

「お預けばかりしちゃう男は嫌われるよ? まあ僕はずっと君を離したりなんかしないけど………まずは話し合いで解決しようかな♡」

「な、なんでも言う事ひとつ聞くから………乱暴しないで、やめて………!」


もう思考の盗聴はパッシブと言わんばかりにどんどんこちらの思考が読まれてる。

両手をワキワキさせながら死んだ目でじりじりと距離を縮める二人から逃げるよう後ずさりしていると。


「っ!?」


ドン、と背中から音が鳴り自分が壁際まで追い込まれていることに気付く。


「なんでもって言ったわね。今すぐ済ませられるからちょうどいいかしら、今からあなたを抱くわ。どこが気持ちよくてどこがダメなのか終わった後でたっぷり聞かせて………ね♡」

「僕が君の上でとろけていく姿しっかり見て、君色に染めてね? あ、もちろんたっぷり可愛いって言ってもらうって約束だよ?」

「あ、ああああああああああああんっ♡」


そこからがオレたちの長い『昼の話し合い』の激戦の幕開けだった。

ハーレムというもっとも男の象徴たるものに強い憧れがあった。

この女たちは自分のモノだと、自分の所有物という証を刻み付けるのがオスの頂点だと信じてなまなかった。

だから手を出したわけだが、後のことなんてどうなるかまでは考えが及ばなかった。

だからだろう。

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