第2話 正真正銘の乙女ゲームの世界

「カノ檻であってたか………とほほ」


小屋みたいな家から街並みに降りてきてひと通り回ってみた感想は案の定というか予想していた通りのもの。

どうやらここは乙女ゲーム“カノジョを愛の檻に閉じ込め溺愛”。通称『カノ檻』の世界で間違いないらしい。

行き届いた繊細な感情描写と数々のイケメン攻略対象に女子からの人気は言わずもだが、乙女ゲーらしくないかわいいイラストで仕上がった綺麗な主人公と敵キャラが特徴で男性陣からも人気が高い。

オレがいるのはメイン舞台となるリ・バキュー王国の首都“シニア”。

すれ違う人々の面影も服装もゲームそっくりで否が応でも気がついてしまう。


「異世界転生一日目、夢が砕け散って人生サ終した件」


人気あってもな………乙女ゲームだもんなぁ………。


「はあ………」


『最悪攻略キャラに転生してれば………!』なんて夢もさっき店の窓に映った自分の姿で呆気なく散ってしまった。

おわた………オレのハーレム無双が………。


「おっちゃん、アムロのサンドイッチ一つ」

「あいよ」


ちょうど枝分かれする当たりの小道にある屋台を通りかかっていたので、小腹を満たすついでに気分転換のためヒロインの好物のサンドイッチを注文することに。


「見ない顔だな嬢ちゃん。よそもんか?」

「ううん魔法使いだよ。後オレ男だから」

「嘘つけどう見ても坊ちゃんじゃなくて嬢ちゃんじゃないか。ってことはお前もこの後『あれ』見に行くだろうよ」

「『あれ』って何? なんかやってるの?」

「おいおいマジかよ、どんだけ魔物ばっか狩ってたんだ?」

「??」


屋台のおっちゃんの得体の知れない定型文にはてなマークが浮かぶみたいに顔をかしげる。

するといかにも「しょうがないなやれやれ」風におっちゃんが説明してくれた。


「今日はあの国王陛下の娘、フェリナ様が結婚なされる日だろ?」

「へぇ」

「やっと得心いったか! まあ、大それた催しなく式を行いたいというアレーナ様の要望があったらしいし、知らなくても無理ねぇか」


がっははと大笑いして注文したサンドイッチを手渡してくれた。

そうか、オレが転生したのはプロローグ終盤を飾る最大のイベント当日だったのか。


「ありがとうおっちゃん。これもらって」

「まいど! そろそろ始まってるはずだし、見たいならはよ行けー!」


おっさんのありがたい掛け声を背に結婚式が行われているどころへ向かう。


「間近で見れるとは思わなかったけどさぁ!」


はやる気持ちを足に乗せるように走り出す。

間に合ってくれよ———!!

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